2002年
テキサス州立ヒューストン大学
 
大学では会計に加えてファイナンスの2つを専攻。
 
 
2007年
三井物産
 
会社では自分の担当営業部門の経理処理や監査の対応などを行う部署に配属、現在に至る。
 
 
 
 
私が留学を志したのは、高校時代に、ある留学支援団体からアメリカ留学をすすめるダイレクトメールが届いたのがきっかけです。それまでは、高校卒業後の進路の選択肢は、日本の大学に進むことしか自分の中にはありませんでしたが、その案内を見て、はじめて「アメリカの大学に行く」という視点が得られました。そして、それも面白そうだなと。

 私は、小学生のころから人とは違うことをやりたがるタイプだったので、普通に日本の大学に通うよりは面白そうだなとか、かっこよさそうだなとか、留学を意識した理由は本当に単純なものでした。それと、父親の影響もありました。私の父親は、仕事の関係で外国から来る人たちをアテンドしていました。外国の方と英語で話す父親の姿を子供の頃から見ていて、「かっこういいな」というイメージを持っていました。そして、自分でも英語が話せるようになりたいと思ったのも理由の一つです。

 2002年の5月に渡米して、まずは3ヶ月間語学学校に通ったのですが、当初は、ほとんど英語が話せませんでした。そこで、最初はマイクロソフトのメッセンジャーを使って、チャットを通して単語や言い回しを覚えました。チャットですと、わからない単語があったら、相手に気兼ねなくその場で意味を調べながら行えますし、タイピングでの会話のため発音も問題にならないですから、気楽でした。そしてその後、覚えた言い回しを実際の会話で使うという感じで、英語を覚えていきました。この方法のおかげで、語学学校を卒業するころにはぼちぼち実際の会話もできるようになっていました。メッセンジャーは、英語を勉強したい人にはおすすめですよ。

 
 
 
その後、2002年の9月にテキサス州立ヒューストン大学に入学しました。専攻はダブルメジャーといって、会計とファイナンスの2種類を専攻しました。はじめは会計だけで始めましたが、自分のなかで会計というのは、簡単に言ってしまうとビジネスを数値に落とすというもの。絶対に学んでおきたかったメジャーでした。一方、ファイナンスは会計で落としこんだ数値を使って、その先に何かを展開させること。それも面白いな、と思って。では、どうせなら両方ともやってしまおうということで専攻を2つにしました。

 大学生活は面白かったです。ヒューストン大学というのは非常に多国籍で、アメリカ人はもちろん、アジア系、ラテン系、アフリカ系と、ありとあらゆる人種が集まっていて、文化の違いなども肌で感じられました。

 留学した経験で生きていることですが、まず全く英語が話せないという状態から行ったので、留学自体が、自分のなかでは相当高いハードルでした。でも、そのハードルを越えて楽しめたという意味では、きつい仕事などにもへこたれないというか、最後まで完遂する力が付いたと思います。また、本当に色々な人種の人たちがいたので、いろんな意見を持っている人たちも受け入れられる柔軟さも得られたと思います。いい意味でのあきらめというか、難しい人でも無理なく付き合えるようになったとも思います。

 
 
 
就職を意識し始めたのは2年生の終わり頃からです。最初はアメリカでの就職も視野に入れていたので、現地の監査法人への就職を進めていました。そして、3年の秋にボストンで開催された就職イベントに参加し、初めて日本の企業への就職活動も始めました。この時、留学生はある意味、日本の大学生よりも就職活動の環境は恵まれているのかもしれない、と思いました。というのも、この就職イベントには外資系も含め、日本の有名な企業がほとんど集まっていました。しかも、その場で採用試験も行って頂けます。私はこのイベントで、3日間で20~30社ぐらい回ったと思います。

 私の場合、個人で留学している方と違って、留学支援団体からのサポートもありましたし、その団体出身の先輩の話も聞けましたし、留学生同士のネットワークもしっかりしていました。そういう意味では情報も十分得られましたから、不安というのはあまりありませんでした。

 困ったことも特にはありませんが、ひとつ挙げるとすれば、アメリカで大学生活を過ごしていた為に、日本での就職活動が十分に行えなかったことです。4年生の夏には初めて3ヶ月間という長期間の日本帰国をしましたが、それもインターンの期間に当てていたので、就職活動らしい活動はまったくできませんでした。もちろん、三井物産に巡り会えたのでよかったですが、欲をいえばもっといろんな会社を見てみたかったかなというのはあります。

 一応、就職活動中にアメリカの監査法人からのオファーもいただいていましたが、アメリカでの就職というのは早々に切り捨てていました。それには理由が3つあります。ひとつ目は、学生時代も長く家族や仲のよかった友人と離れて暮らしていましたが、アメリカで就職するとなると、さらに気軽に帰って来られなくなります。ですから、家族や友人の近くで生活したいというのがまず一点。そして、留学して、当たり前ですが自分が日本人だというのを強く意識させられたことも大きいです。自分の日本人としてのアイデンティティが強まるというか。ですから、アメリカに残ってアメリカ企業のために働くというよりは、日本に帰ってきて日本企業のために働く方が、日本のためになりますし、大げさかもしれませんが、日本のために何かできたらという気持ちもありました。また、自分のバリューを考えたときに、アメリカで日本語が話せることを武器にしてビジネスをするのか、日本に帰ってきて英語が話せることを武器にしてビジネスをするのか、どちらのバリューが高いかということを考えたときに、やはり日本に帰ってきた方が強いと思ったからです。

 
 
 
日本の企業に的を絞って就職活動を続けていくなかで、最後は三井物産とインターン先の大手証券会社の2社で悩んでいました。最終的に三井物産を選んだ理由は「人」でした。

 4年生の夏休み期間に、日本でインターンをさせていただいた大手証券会社。そこでの仕事は楽しかったですし、内容にも満足していました。このような状況から、最終的に三井物産を選んだのには、ある出会いがきっかけでした。そのインターン先でたまたま、三井物産からハーバードビジネススクールにMBA留学中、私とはポジションが全く違いますが、同社でインターンをされていた方と出会ったのです。その方は、ちょうど自分が悩んでいる2社を経験している人だったので、両社について、よく相談をしていました。真摯に相談に乗って頂き、また、仕事もすごくできる。その姿を間近で見ているうちに、この人の下で働きたいと思うようになってきたのです。そして、三井物産の選考が進んでも、会う人会う人すべてが自分と合うというか、この人の下で仕事をしてみたいなと思うような魅力的な人ばかりでした。

 また、元々自分のなかの目標というのがCEOではなく、財務戦略を司るCFOという立場で、それを早い段階で実現できる会社を選びたかった。それを三井物産の面接のときに話をしたら、ちょうどこれからCFOを養成していかなくてはいけなくて、そういう人材を求めている、と聞き、自分の目指すところとぴったりと合ったというのも、三井物産に決めた理由です。

 
 
 
インターンや面接のときに感じたことですが、やはり外資系企業は、ドライなところはドライです。また、日本のビジネスマンとしての立ち振る舞いみたいな部分は学びづらいのだろうなという印象もありました。それに比べて三井物産は日本で歴史のある会社で、「人の三井」と呼んで頂けるほど、人を成長させることに力を注いでいて、一人前になるまでビシビシ鍛えてもらえそうだなと。仕事で大事なことを教わるだけでなく、業務後にはビールをつぐ時もラベルは上側にしろとか指導されたり(笑)。日本で働いていくことを考えれば、そういう部分も実際大切なんだと思います。大学時代を日本で過ごしていないだけに、自分は周りの人よりも、お酒の席での気配りなどで、いわゆる日本人的なところが足りないと感じることもあります。そのため、日本で気配りの面も含め、一から鍛えてもらおうと思っています。

 そういう部分も含めて、自分の経験から言いますと最初のキャリアのスタートは日本がおすすめだと思います。アメリカでは「個」が重視されているので、個人の成長は個人に任されているところがあり、その結果として仕事ができる分には非常に良い評価を得られますが、結果を残せなければもちろん厳しい評価を受けることになると思います。しかし、日本は「和」を重視していて、全員がある一定のレベルまで成長するよう支援する風土があり、特に仕事ができない新人の間は先輩社員が本当に根気よく指導してくれたり、それ以降もお互いが支えあうようなカルチャーがあると思います。

 
 
 
現在は業務プロセス管理第三部という部署で、自分が担当している船舶海洋部の業務プロセス改善や監査・税務の対応などをしています。会計周りのことなので、大学で学んだ会計の知識を生かしながらできる部署ではありますが、実際には日々新しく勉強していることの方が多いです。やはり大学で学んだことはアカデミックで、実務とは全然違うなというのをつくづく感じます。もちろん、その分やりがいはあります。

 現在は担当している部署の方から、経理関係で困ったことがあった時に、最初に相談を受けるような立場です。私はそうやって人をサポートして、それで感謝される仕事というのが、昔から好きなんです。インターンをしているときや、学生時代もそうでしたが、何かをして人に感謝されることがすごく嬉しくて、人のために働いて、その人から「ありがとう」とか「助かったよ」と感謝されることが、自分にとって一番の報酬だと思っています。

 そういう意味でも、私は自分が突き進んで周りを引っ張って行くという役割ではなくて、そういう熱い人を横でサポートしながら、いつもありがとうって言ってもらえる女房役のようなポジションが向いているのだと思っています。それがCEOではなく、CFOを目指す理由でもあるのです。

 まずは今の仕事をきっちりとこなすことが最優先ですが、今後は会計、ファイナンスのどちらもやっていきたいと考えています。特にファイナンスは実務に関わった事がないので1度はやってみたいですね。また、仕事以外でも今年の8月頃から、米国公認会計士の資格をとるためにスクールにも通って勉強しています。スクールは仕事が終わってから、大体週に4日くらいです。確かに忙しいですが、まだ入社2年目ですし、今はとにかく勉強です。1日でもはやくCFOになるという目標に向けて、今後も精進していきたいです。