2005年6月
ニューヨーク州立大学バッファロー校卒業
 
専攻 : 心理学/認知科学
 
2006年4月
三井化学株式会社 入社
 
生産・技術本部岩国大竹工場総務部人事グループ所属
 
2008年7月
機能材料事業本部 自動車・産業材事業部 潤滑油添加剤グループへ転属。
現在に至る。
 
 
 
 
地元・北海道の高校を卒業して、その年の9月に認知科学を学ぶために、アメリカのネブラスカ州立大学へ留学。3年次からは、より専門的に学ぶために、ニューヨーク州立大学バッファロー校に転学しました。私は高校の頃から、大学では認知科学を学びたいと考えていました。認知科学はアメリカで生まれた学問です。日本では、大学院では学ぶ環境が整っているのですが、大学ではまだ浸透していない学問。真剣に学ぶのであれば、研究が進んだアメリカの大学の方が勉強になる。それに、留学すれば英語という付加価値を身につけることもできる。そう考えたのが留学した理由です。留学当初は、就職のことなんてまったく考えておらず、大学卒業後は大学院に進み、博士号まで取ろうと考えていました。

 
 
 
就職について初めて考えたのは、大学3年次の初めの頃でした。私は留学斡旋会社を通して留学していたのですが、その会社の方が「そろそろ真剣に就職のことを考えなければダメだぞ」と、就職に関するビデオを用意してくれたのがきっかけです。そのビデオというのは先輩たちの就職活動体験談を集めた内容で、最初は、「私はどうせ就職しないで、大学院に進学するし…」と、まったく気にしていませんでした。しかし、しばらく観ていると、私と同じように大学院進学を希望していた、という先輩が出てきたのです。その方は大学院志望から方向転換し、新卒で就職したとのことでした。そしてその理由を「大学院へは勉強したいと思ったときに、仕事を辞めればいつでも進むことができる。でも、新卒というブランドで自由に就職するチャンスは、今しかないと思った」とおっしゃっていました。それまではまったく思いもつかなかった考え方でした。

 マーケットや経営学を学んでいる方は別ですが、例えば認知科学というマイナーな学問でこのまま大学院に進みPh.D.を取ったら、その後は、研究員か大学教授になるしか道がないかもしれない。もちろん好きな分野なので、研究員や大学教授になることが嫌だったわけではありません。ただ、選択肢を狭める可能性がある方向へ進むことに対し、不安を感じることもあったのです。そのため、先ほどの先輩の言葉に妙に納得できました。確かに大学院進学は、一回就職してみて、その後でも目指すことはできるなと。依然、大学院進学志望だったことに変わりはありませんでしたが、このことがきっかけで就職も意識するようになりました。

 
 
 
4年生になると、周りの日本人の友人が本格的に就職活動を始めたこともあり、私も腕を引っ張られる形で、現地で開かれる就職イベントに参加してみました。この時はとにかく色々な企業の話を聞いてみようと、業界も何も絞り込まず、コンサルや広告や商社、メーカーなど、幅広く多くの企業ブースに足を運び、話を聞いて回りました。今までほとんど就職について考えたことがなかったので、実際に企業の方から聞く話は新鮮で、就職することに対して強い関心が生まれました。化学について興味を持ち始めたのもこの時です。同イベントに参加していた化学メーカーの話を聞いて、素材を作るのって面白そうだなって。このイベント終了時には、大学院進学から就職へ、心が大きく傾いていました。

 こうして真剣に就職について考え始めたわけですが、実は私は、就職活動中、まったくと言っていいほど就職先の業界を絞っていませんでした。というのも、就職に心が傾き、自分は何がしたいのだろうと考えたとき、私は人と話すのが好きなので、人事の仕事に就きたいと思ったのです。人事部は大半の企業にあります。特定の業界に強いこだわりがあったわけでもないので、それならば、就職先は事業内容や会社の規模等ではなく、その会社で働く「人」を基準に選ぼうと考えていました。やはり、どんなに事業内容が魅力的な企業であっても、一緒に働く「人」が魅力的でないと、仕事をしていても面白くはならないと思ったのです。

 
 
 
大学4年次は、大学での講義や課題の合間をみて、大学構内のカフェテリアスタッフ、日本人補修校の先生のアルバイトを2つ掛け持ちしていて、とても忙しく、満足のいく就職活動はできなかったのですが、インターネットで企業の情報を収集して、面白そうな企業を見つけては、個別でメールを送っていました。現職の三井化学を初めて知ったのもこの時期です。先のイベントで化学メーカーに興味を持って、他にどんな企業があるのだろうと探して、「三井化学」の名前を見つけ、新卒採用の質問メールを送ってみました。メールには「6月に大学卒業後、日本に帰国し、夏に東京で開催される留学生向けの就職イベントに参加する」旨を添えました。

 6月ですと、多くの企業の新卒採用はすでに終了しており、個別でメールを送った企業の返答は「三井化学」を除いてはすべて、「採用はすでに終了しております」でした。そんな中、三井化学だけは、「採用はすでに終わっているけど、化学に興味があるなら、東京に来るついでにウチの会社を見においでよ。話をするだけになってしまうけど、参考になるかもしれないよ」といった内容でした。こう言ってくれた企業が他になかったので、大学卒業後、北海道の実家に戻り、夏に東京へ出てきたときに、三井化学に寄らせてもらいました。

 この時は、本当に話を聞いてみるだけのつもりでした。現に、参加した2つの留学生向け就職イベントでは、10社ほど面接も受けていて、選考も進んでいましたし、ただ、せっかくメールを頂いたので、会社というものを見てみる意味も含めて、三井化学に訪問してみたのです。

 
 
 
三井化学の担当者はとても話しやすく(何を話したかはよく覚えていませんが、確か、留学中にどんなことをしていたか、などを話したと思います)、担当者も私に興味を持ってくれたみたいで、しばらく話し込んでいると「面接受けてみるか?」と。

 こうして三井化学の選考も受けられることになったのですが、大手で、しかも財閥系の会社というと、トップダウンが強い、とても堅そうなイメージを持っていたので、この予想外の展開にビックリしたのと同時に、この会社にはきっと、社員一人ひとりが自由に決断できる企業風土があるのだと思いました。ぜひ面接を受けてみたい。他にどんな人がこの会社で働いているのか、とても興味が沸きました。

 選考が進んでも、出てくる人出てくる人、とても良く喋る人ばかり。その雰囲気からは自由な感じが受けて取れ、みなさん自分に自信を持って、のびのび働いているのだと思いました。この人たちが育った会社で働けたらきっと面白いだろうな。選考が進むほど、その思いは強くなっていき、そして、3週間程度の選考を経て、内々定を頂くことができました。この時、平行して受けていた企業の中にも、内々定を頂いていたところがあったのですが、やはり最後は「人」で選びました。選考中の企業も含め、他の企業にはお断りを入れ、働いている「人」に魅力を感じた三井化学でお世話になることに決めたのです。

 
 
 
(写真)100%化学合成オイル『ルーカント』
入社から2年間は、人事で経験を積み、今年(2008年)の7月からは機能材料事業本部、自動車・産業材事業部という部署で、営業・マーケティングに携わっています。当社では、三井化学がどのような業務を行っているのか、その全体像を学ぶために最初は、製品製造の現場である工場で経験を積み、その後に本社へ配属されます。私は岩国(山口県)の工場で、人員計画や採用、評価制度の管理など、2年間で人事部の仕事をひと通り経験させて頂きました。入社から1年くらい経った頃には、他の仕事にも興味を持ち始め、本社配属を機に人事以外の配属を希望しました。

 現在私は「ルーカント」と呼ばれる、車のギアオイルの添加剤が主用途となる100%化学合成オイル、その欧州と米国エリアの営業・マーケティングを担当しています。三井化学アメリカと三井化学ヨーロッパ、当社の海外拠点の担当者とやり取りし、製品を管理するのが主な仕事です。月に一度くらいのペースで海外に出張し、直接取引先を回ったりもしています。

 「ルーカント」は当社の製品の中でもとても人気がある製品で、特にヨーロッパで高い需要があります。入社3年目でこのような花形の仕事を担当させてもらっていることに、とてもやりがいを感じています。また、まだ配属されたばかりでわからないことばかりですが、その代わり、次から次へと新しいことを学ぶことができ、その状況に日々充実感を感じながら働くことができています。私はマーケティングの知識も不足しているので、まずはそこをしっかり勉強しなければいけません。それと今後、海外のトップたちと交渉をしていくには、MBAも取る必要があるかもしれません。今は取引先を回るのでも、先輩に付いてもらわなければままならない状態ですが、先輩方からどんどんノウハウを吸収して、自分でももっともっと勉強して、今の仕事で早くひとり立ちできるよう頑張っていきたいです。大学院進学を志望していた留学中は、まさか自分がマーケティングに興味を持ち、勉強することになるとは思ってもみませんでした。結果的に、私の場合は就職して自分の可能性を広げることができたと思っています。

 
 
 
私は留学で得た最大の経験を、少し恥ずかしい言い方なのですが、「自分の可能性を信じられるようになったこと」だと思っています。留学当初は英語にも不慣れで、教科書を読むのにも膨大な時間がかかれば、講義でノートをとるのもままなりませんでした。ペーパーを作成するのも、周りのアメリカ人の学生はパッと終わらせてしまうのに、私は彼らの何倍も長い時間パソコンに向かって作業しているのに、全然進んでいない。それがとても悔しくて、メジャーに関しては「勉強しました!」と胸を張って言えるくらい、とにかく勉強しました。すると、次第に教科書を読むスピードも上がり、1週間で1つ作成するのがやっとだったレポートも、週に3つ、4つ作成できるように。記述式の問題だって、英語が母国語の学生より早く終わらせられるようになりました。そして、この経験を経て、「なんだ、自分だってやればできるじゃん」と、自分を信じられるようになったと同時に、大きな自信に繋がりました。

 今でも仕事でわからないことがあったり、壁にぶつかりそうになった時、「そんなこと言われてもわからない、無理だよ」と思うのではなく、「大丈夫、頑張れば何とかなる」と自然に思うことができます。これは留学中に経験したこと、一生懸命勉強したことで得ることができた自信のおかげだと思います。

 私は、留学中はその時にその場所でしかできないことに真剣に取り組み、成し遂げることが大事だと思います。私の場合はそれがメジャーの勉強でしたが、大学での勉強だけではなく、サークルでもプライベートなことでも、例えばたくさん旅行したということだって、題材は何でも良いのだと思います。「自分は留学中にコレだけは成し遂げた」「手に入れたぞ」というものが最低でも1つ以上あれば、それが自信となり、きっと就職活動にも活きてくるのだと思います。私は人事で採用にも携わって、やはり、自分が成し遂げたことに対しアピールできる人は、魅力的に見えました。みなさんも、今しかできないことに真剣に取り組み、誰が何と言おうと「自分はコレだけはやった」という自信を掴んで帰ってきて下さい。