1999年
東京都立大学 法学部
 
 
1999年
株式会社NTTドコモ
 
 
2004年
海外トレーニー(北京事務所)
 
2005年
自ら希望を出し、北京事務所に赴任
 
2008年4月
日本へ帰国。国際事業部 企画担当。現在に至る。
 
 
 
 
私は今年で入社9年目になるのですが、入社当初は「海外」にはまったくと言っていいほど興味がありませんでした。元々大学の頃から通信業界に興味があって、将来は通信業界で働きたいと考えていました。就職活動で応募したのも通信関係に絞って10社くらい。自分にとってドコモは、希望通りの企業でした。

 転機となったのは、入社から5年くらい経った頃です。私は入社時からずっと法人営業を担当していました。法人営業の仕事はとても面白くて、そこでSE的な知識、営業の知識、コミュニケーション能力など、色々なことも勉強できましたし、スキルも身に付いたのですが、さすがに5年近く同じことをやっていると、何か違うことをやりたいと思うようになったんですね。それと、ある程度のキャリアを積んで、そろそろ、今後自分がどういう方向に進みたいのかを、真剣に考えなくてはいけないな、と思いました。もちろん、そのまま営業のスキルを磨いていくという選択肢もあったのですが、ただ、自分の希望通りの企業に就職して、充実の日々を送れている、それに満足していてはいけないな、と思ったのです。


 業務上のスキル以外で、何か自分の中に形として残る、次に繋がるようなスキルを身につけたい。果たして今から自分に何ができるかと考えた時、まっ先に頭に浮かんだのが「語学」でした。語学を勉強しておけば、今後のキャリアの幅が広がるだろうと。それで、スクールや通信教育等で真剣に英語を勉強し始めたのです。そして、TOEICである程度の結果が残せたのを機に、思い切って、弊社のキャリア研修制度の1つである海外トレーニーに応募しました。これが、自分が「海外」を意識した最初のきっかけです。

 
 
 
ドコモは、人材育成のための研修制度が充実していて、MBA取得のために、2年間海外の大学に留学させてくれる制度もあります。私が応募した海外トレーニーというのは、「海外へ社員を派遣し、中長期国際事業戦略に必要となる即戦力人材を育成する制度」。今は多少変わっているかもしれませんが、私が行った当時は、自分で1つのテーマを決め、そのテーマに対し、半年をかけて調査・研究を進めていく。そして、半年後に調査の結果を発表するといった制度でした。その間仕事というのは、派遣された現地の事務所を手伝う程度。仕事よりも研究や調査をメインにさせてもらいました。派遣先は、アメリカとか、ヨーロッパとか、結構たくさんあったのですが、その中から私が選択したのは中国。両親が中国関係のビジネスを行なっていた影響もあり、中国の市場に興味があったんです。そこで私は「中国における法人営業」をテーマに、半年間調査を続けました。具体的には、中国のキャリア、我々のようなオペレーターが、中国の法人ユーザーに対してどういうサービスを提供していて、どういう営業をかけているのか。または、メーカーさん、システムを作るような会社さんと、どういうスキームを組んでお仕事をしているのかとか、そもそも法人顧客のニーズは何なのかとかです。ドコモでは当時、中国ではまだそういう視点での調査そのものが行なわれていなかったので、結構幅広く調査を行なっていました。最終的には「中国でビジネスをする際、どのように法人営業を行なえば良いのか」というのをテーマのゴールに設定し、調査を進めました。

 
 
 
調査のために、幾度となく中国企業を訪問しました。英語の勉強はしていましたが、ビジネスで通じる程には至っていませんでしたし、ましてや中国語は全然でしたので、現地の日本語が話せるスタッフに同行して頂き、企業に訪問して、通訳して頂きながら話を聞いていました。そこでまず感じたのは、中国の人は、仕事の面ですごいフランクだなと。言葉がよくわからなかったせいかもしれないのですが、相手の態度ですとか、接し方、身ぶりにしても、フランクで。結構ざっくばらんに色々な話ができる。商談のカラーというか、ビジネスにしても、お互いに思っていることをストレートに言って、その中から妥協点を見い出すことができる。そういうのは、日本よりも強いと感じましたね。あと中国特有のことで言いますと、食事とかお酒を一緒に飲むとかですね。そういう中で仕事をし、関係を作り上げていくという文化がまだまだ根強い。私は調査で話を聞く程度だったので、それほどそういう場に参加する機会はなかったのですが、現地の事務所の方の動きを見ていると、頻繁に一緒に食事を取りながら情報をもらっていましたね。

 中国でビジネスをする際、どのように法人営業を行なえば良いのか。私が半年間の調査で辿り着いた結論は、まず、現地の有力な企業とパートナーを組んで、お互い資本を入れるなりして、一つの共同体となって、現地の市場に入り込んでやっていく。それと特許ってありますよね。そういうライセンス的な部分を前面に出して、ドコモでしかできないことを積極的に前に出して営業を行なっていくというスキームで、最後テーマをまとめました。というのも、国内では「ドコモ」というブランド力があり、さらにすでに多くのユーザーさんにご利用頂いているので、そのユーザーとのコネクションを武器に営業をかけることができるんですね。しかし、海外では「ブランド力」も通用しませんし、ユーザーも少ない。そういった状況を受け、そこで営業をかけるにはドコモにしかない、技術やライセンスというものを前面に押し出していく必要性がある、という結論に辿り着きました。「これはドコモでしか、できないんですよ」。少なくとも海外でやるには、こういった提案ができないとダメだと感じました。

 
 
 
海外トレーニーの期間は半年と決まっていましたので、テーマの調査をまとめ、一旦帰国しました。調査という面では、一通りの結論に辿り着けたと思うのですが、ただ、半年経って、ようやく中国での生活にも慣れ、中国でのビジネスのやり方も見えてきたというところでの帰国でしたので、正直まだ物足りなかったのです。帰国時には、慣れてきた部分を今度は仕事に活かしたいと、中国というフィールドで仕事がしてみたいという想いが強くありました。それで、帰国時に「ぜひ北京で、中国で仕事がしたい」という希望を人事育成部(当時)に提出して、帰国から4ヵ月後、今度は晴れて北京事務所へ配属。今年の4月に帰国するまで約3年半、現地で実際に仕事をさせて貰いました。


 この3年半の経験で、中国でドコモがビジネスをするには、どんな形がいいのか。トレーニー時代に調査していたことが、より具体的に見えてきた。それと、中国でのビジネスのやり方を学びました。個人としても、今度は仕事として企業と接していたわけですから、中国のやり方に慣れることができたと思います。

 中国は、いま発展している段階ですので、市場全体に勢いがあるんですね。全体的にベンチャーっぽくて、そこで成功するには、ものすごく「スピード」が重要です。ただ、ドコモを含む日本の大企業は、そのスピードについていけない。そこがまず、ギャップとして感じました。チャンスだと思ったら、リスクを背負ってでも、積極的にアクションを起こさなければいけないんです。たまには失敗することもあるとは思うのですが、それでも成功する可能性を追求していかなければ、中国では成功できないと感じました。現に、中国で成功している企業というのは、そういう形でやっているんですね。それと、中国というのは、今、発展している段階です。経済の成長に、法規制ですとかルールというのがまだ追い付いていない。ドコモも含め、日本の大企業というのはコンプライアンス、制度とか法律とかを重視しますよね。日本がそういう国ですから当然ですし、そして、それはそれで絶対に重要なことなのですね。ただ、中国では、そういうことを気にし過ぎると間に合わない。法律自体もまだハッキリと定まっていないので、そうなると、迷うことが多いんですね。これはどうやって解釈すればいいのかですとか。ものすごいグレーな部分が多いのです。それをリスクと捉えて、ちょっと怪しいからって躊躇してばかりいては、どんどん置いていかれる。日本の企業で中国で大成功している会社が少ないというのは、1つ、そういう理由があると思います。

 ナショナルブランドを持っている海外でも有名な企業は、製品をどんどん投下していけば需要もあります。しかし、ドコモのように中国で知名度の無い企業が、これから現地で何かやっていこうという時には、ベンチャー体質に戻って、もっと勢いでやっていかなければ、中々成功はできないな、ということは感じました。まぁ、言うのは簡単なんですけど(笑)。

 
 
 
今年の4月に日本に戻ってきて、現在は、国際事業部の企画担当というところで、主に海外拠点の管理、海外拠点と連係した調査業務を行なっています。調査というのは、海外の携帯電話や移動通信の市場調査、または新しいサービスですとか、海外のオペレーターがどのような動きをしているかなどを調べたりですね。あとはそれ以外にも、海外からドコモにお客さんが来る時。ドコモの見学がしたいですとか、ドコモの幹部と話がしたいですとか、そのような海外からの来訪関係の調整もしています。それから逆に、ドコモが海外に打って出るような、展示会ですとか、幹部が海外に行って、各界の著名人、知識人から色んな業界の情報、経営のアドバイスを頂く場、アドバイザリーボードと言うんですけど、それの運営も行なっています。ドコモと海外を繋げることなら何でも、結構幅広く業務を行なっています。

 ドコモという会社は本当に、社員が育つ、社員を育てる環境が整っていると思います。特に自分は、弊社の人材育成制度に、本当にお世話になっていますね。海外で勉強がしたいと思った時には、海外トレーニーに行かせて貰って、海外で仕事がしたいと思ったら、今度は北京に配属してもらって。今、こうして改めて振り返ってみて、そう思いました。もっと感謝しなくてはダメですね(笑)。もし、海外トレーニーという制度がなかったら、「海外」という世界を知れなかったかもしれません。会社に属しながら、自分が多方面に成長できるフィールドが整っているということは、素晴らしいことですし、有り難いことだと感じています。この制度のおかげで、私のキャリアの方向性は大きく広がったと思います。

 今後も、中国で学んだことを活かして、中国を中心とした海外方面で、何か仕事をやっていきたいと考えています。ドコモが中国でやっているビジネスというのは、現在は投資がメインです。現地におけるリアルなビジネスというのが、現在はまだありません。ただ、7月下旬に上海に現地法人が作られ、現地でのリアルなビジネスを作ろうと動き始めました。ぜひ、そういったフィールドにまた機会があれば身を置いて、現地で何かやってみたいと思います。具体的に、これをすれば必ず成功するといったものはないのですが、ただ、我々は携帯電話の会社ですので、それに関わる仕事という意味でまだまだチャンスはあると思います。その中で、できればビジネスに結びつくところで、自分がリードしてやっていけたら格好いいかな(笑)、なんて思います。そうなれるように、これからも頑張っていきたいです。