せっかくの努力を無駄にしないよう、力をかける方向を間違わずにより大きな効果を上げられる、
「レバレッジ」の原理を生み出した本田直之さん。
自身、アメリカでの留学経験もあり、現在、在留邦人と日本を結ぶ掛け橋の役目も務める本田さんから、より効率よく成果を上げる方法論と、頑張る読者へのメッセージを頂いた。



取材・文/佐々木桂 撮影/鷹野政起
 
 
プロフィール
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO。外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画。常務取締役としてJASDAQ への上場へ導く。現在、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるレバレッジマネージメントのアドバイスを行う。サンダーバード国際経営大学院経営学修士(MBA)。著書に本文中の二冊の他、『レバレッジ人脈術』『レバレッジ勉強法』『レバレッジ時間術』がある。
 
 
 
 
累計40万部を越える「レバレッジ・シリーズ」の著者・本田直之さん。
彼の生き方の根底には、常に「レバレッジ」という考え方がある。
「そんなたいそうなものでもないんです。僕の場合、本当にめんどくさがり屋でして、コツコツできない怠け者なだけなんです」と笑う本田さん。ただ、この怠け者体質が、レバレッジに巡り会うきっかけにもなっているという。

 そもそもレバレッジとはどういう考え方なのか。はじめて聞く読
者のために、少し説明しよう。

 レバレッジ(leverage)とは、そのまま訳せば、「てこの作用」。
それが転じて、小額投資で多額の利益を上げることに使われたりしている言葉だ。そんなレバレッジを本田さんは、「てこのように少ない力で、大きな成果を上げること」と捉え、金融の投資だけではなく、読書術、思考法、時間術、勉強法、人脈術に至るまで、すべてにレバレッジは利用できるとした。
「ただし、レバレッジというのは、ラクして成果を上げようというものじゃないんです。同じ努力をするなら、より大きな成果があがる方法で努力する方が効率がいいということなんですね。一番もったいないのって、一生懸命努力してるのに、努力の方向性をまちがえちゃって、結局何も成果が上がらないといったことなんです」

 これがてこの作用と同じなのである。てこも支点をどこに置くかによって、力の伝わり方が大きくも小さくもなる。より小さい力で大きな成果を得る。これがレバレッジの原理なのである。

 本田さんが、最初にレバレッジを考えたのは、大学受験だった。
「もちろん、当時はレバレッジという言葉で知っていたわけではなくて、今から思うと、あれもレバレッジを使ってたなっていう感じですけど…」

 本人曰く、あまり勉強もしていなかったという高校時代。大学へ行く生徒も少なかった高校にいながら、本田さんは、ある時、どうしても大学へ行きたいと考えるようになる。
「成績だけ見ると、絶対に行けるようなレベルじゃなかったんですけどね。でも、なんとかならないものかと考えてる時に、同じように遊んでた先輩が、大学に入っちゃったんですよ。アレ?入れるの?って感じですよね(笑)。そこで、受験もやり方次第なんだと気づいたんです」

 限られた時間の中で成果を上げなければならない受験というのは、ただやみくもに努力をしていても無駄が多いと気づく。より小さな力で大きな成果というレバレッジ原理との出会いとなった。
「その頃は、そんなに深く考えていたわけじゃないんですけど、周りを見渡すとコツコツやっていた人が落ちてるのに、コツコツが苦手な人が受かったりしている。何かあるなとは思いました」

 そして、社会人になってからも、同じ現象に出会う。一生懸命に働いているのに成績が伸びない人がいる一方で、傍目には決してそんなに一生懸命には見えないのに、何故か成績のいい人がいる。
「努力してるのは、みな同じだと思うんです。ただ、力のいれどころを間違ってる人と、そうじゃない人では、成果の大きさが違ってくる。これがわかった時に、コツコツやるのが苦手な自分にはこの方法しかない!そう思ったんです」


その後、本田さんはアメリカに留学する。若い頃から、「将来はハワイに住みたい」という漠然とした夢があり、その実現の第一歩として、まずは語学留学を考えたのだ。当初、ハワイ大学を考えていたのだが、とある人から「メインランドの学校へ行って、ハワイの人間と知り合いになる方がいい。それに大学を出ているのだから、また大学に入るよりもビジネススクールがいい」とい
うアドバイスをもらい、アメリカ本土のサンダーバードに留学することになる。そして、ここでもレバレッジの重要性を体感する。
「英語もろくにできないのに課題は山ほど出されるわけです。ここでも時間との戦いです。つまりより効率よく勉強しなければ、時間ばかりが失われる結果となってしまう。これじゃいかんと」

 そこで生み出したのが、後に本となるレバレッジの勉強法、時間術、読書術だった。
「あの時期にあれだけ膨大な課題と取り組んだというのは、非常に大
きな経験です。どうすれば効率よくできるかというのは、机上の空論では体得できない。一度、メチャクチャやってみて、はじめてわかることだと思うんです。例えば、新卒の社会人が、仕事もそっちのけで理論ばかり勉強しても決して成果はあがらない。やはり、やらなければならない時期は、一度がむしゃらに仕事に取り組んでみる。そうしないと実戦では通用しないと思います。実際、僕自身、あれだけやることができたから、レバレッジを理論立てることができたんだと思いますしね」

 本田さんの著書を読んで、ラクして成果が上がると思い込む人が時々いるという。しかし、それはまったくレバレッジの本質からずれている。甚だしい勘違いなのだ。
「何も努力しないで成果があがるわけはありません。ただ、同じ努力をするなら、無駄なく効率の良いやり方というものがあるんだよと。それがレバレッジなんだと、何度も書いてるんですけど、時々、勘違いする方もいらっしゃるんですよね」

 ラクして成果を上げたいという考え方と同じぐらい誤った考え方は、短期で成果を上げたいという考え方だという。
「特に若い人は、今すぐ何かやりたいと思ってしまう。今すぐハワイに住みたいとか、今すぐ本を出したいとか、それで僕にどうすればいいですかって聞いてくるんですけど、よっぽどの天才でもないかぎり、そんな方法はないんですよ。みんな短期でやろうとしてできないからあきらめてしまう。でも、時間かければできるんですよ。経営学の巨人といわれるP・F・ドラッガーも『1年でできることを多く見積もりすぎる一方で、5年でできることを少なく見積すぎている』と言ってるように、みんな長期でできることを少なく見積りすぎなんですね。5年といわず10年で考えてみれば、やりたいことは大概できると思います。
10年積み重ねればいろんなことができますよね。それを短期であきらめてしまうのは、もったいない話だと思うんですよね」

 本田さん自身、18年前から毎年ハワイへ出かけ、特にここ3年間は、2ヵ月に1回のペースで訪れ少しずつ人脈を築き上げる努力をし、昨年、満を持してハワイへ住み始めた。時間をかければかなわない夢はないのだ。
「ただ、それをコツコツやれっていわれても難しいかもしれません。
10年間コツコツ努力しろっていうのはね。だったら、それを無意識化するといい。意識して努力するって結構ツライですよね。だから、例えば、時間割を作って、日々のスケジュールにはめ込んでしまう。コレ、慣れるといいですよ。あんなに落ち着きのない小学生が、何故、あんなに黙って勉強できるかっていったら時間割があるからです。それに従って過ごしているうちに、意識せずに勉強もして、ちゃんと遊んで、ご飯食べて、睡眠もとって…と、一日を有効に使ってる。だから、僕なんかも、やらなきゃならないことは、無意識にやってしまえるように、時間割に組み込んじゃうんです。そうすると、後で振り返ってみると、やり終えていたってことになる。でないと、コツコツができない怠け者には難しい」


ハワイに住みたい、事業をやりたい、本を出したい、そんな夢を一つ一つ叶えてきた本田さん。夢を実現するためには、目標を明確にした方がいいという。
「留学にしたって、ただ英語が話せるようになりたい…じやなくて、英語を話すことで何をしたいのかとか、突き詰めて考えてみる。すると、英語だけじゃなく、これもあれもと、やらなければならないことも明確になってくると思います。特にこれからの時代、英語が話せるというだけではアドバンテージにはなりません。自分は何をしたいか、自分には何ができるのか、そういうことをしっかり持っている人が強いと思いますね。そこがしっかりしていれば、就職するにしても、どの会社にいけば、将来の夢につながるのか、おのずとわかってきます。ただ漫然と大企業をめざすだけではなく、自分の目標にプラスになる企業を選ぶ。お金を払ってでも働きたいという会社だったら、毎日充実しますよ」

 本田さんの次の目標はJBN、ジャパニーズビジネスネットワークだ。
「海外で活躍しているビジネスパーソンや起業家などを応援する目的で立ち上げました。海外にいると、なかなかインタラクティブに話を聞きながら情報を得るということができない。情報は本や雑誌、インターネットぐらい。どうにかしてインタラクティブな情報を提供
したい。そんな思いがきっかけでした」
 本田さん他、同じ思いのベストセラー作家が集まり、ボランティアでセミナーを開いた。最初のハワイが大好評を博し、以後、シンガポール、上海と続き、今後は、ロサンゼルス、バンクーバー、ゴールドコースト、シドニーが予定されている。セミナーと同時に行
う交流会も、横のつながりを強固にするという意味で、大きな成果を上げているという。
「最終的には、海外で活躍している人たちの情報交換の場を作れればいいなと思っています。なかなか横のつながりがないために、同じような苦労を同じタイミングでしてしまう。それがお互い情報交換しあうことで、一つの苦労、一つの失敗を取り除くことができる。そういうことのお手伝いができれば…」

 ビジネスパーソンが主体の会ではあるが、留学生の出席も大歓迎だという。現地で働いたり学んだ
りしている人たちにとって、日本の生の情報は確かに嬉しいに違いない。
「海外でがんばる人たちと日本をつなぐ掛け橋となって、より多くの人たちの人生に貢献できれば嬉しいですね」




まず読んでもらいたい!この2冊
『レバレッジ勉強法』『レバレッジ思考』『レバレッジ人脈術』などなど、数あるレバレッジシリーズの中、何から読んだらいいのか?本田さん曰く「まず最初に読んでほしいのがこの二冊」。レバレッジの基本がここに。




『レバレッジ・シンキング』
(2007年/東洋経済新報社/¥1523・税込)
 
 
少ない労力で大きな成果を生む レバレッジの基本の書

レバレッジの考え方のベースがこの本。レバレッジとは何なのか、どうやってレバレッジをかけるのか、どうすれば少ない労力で成果を上げられるのか等々、レバレッジの基本が体系的に書かれてある。キーとなるのは時間・労力・人脈・知識の4つのパーソナルキャピタル。自分資産だ。自分自身を投資的視点で見る方法論がわかる本。
 
 
合理的な情報インプットで思考を劇的に変える

ビジネス書というのは、最もリーズナブルで効率的なインプットができる道具ともいえる。ただし、そのビジネス書も、上手に読めないと、読んでいる時間が無駄になってしまう。この本は、ビジネス書を投資ととらえ、どうやったら一冊のビジネス書から大きなリターンをとることができるのか。その方法を提言した本となっている。
 
 
本田直之氏
主なキャリア

1987年:明治大学入学
1989年頃:ハワイでの生活をイメージする
1991年:明治大学卒業
1991年:日本企業の駐米
1994年:サンダーバード大学大学院留学
1996年:同校卒業
この間、オラクル、シティバンクほか外資系企業。
バックスグループ経営参画~2001年上場など
2004年:二カ月に一回ハワイに渡航
 3月レバレッジコンサルティング株式会社設立
2005年:東洋経済編集者と出会う
2006年:
12月『レバレッジリーディング』自著初出版
2007年:ハワイに拠点。年半分滞在
 5月『 レバレッジ時間術』出版
 6月 『レバレッジシンキング』出版
 7月 JBNチャリーティーイベント実施
 9月『 レバレッジ勉強法』出版
 12月『 レバレッジ人脈術』出版
2008年:
 2月『「レバレッジ思考」を
  20代でマスターせよ!』
 3月『レバレッジオーガナイザー』出版