USBという国際金融系の会社が、3年ごとに行っている「世界の主要都市の賃金調査」。今回はこの調査レポートを利用して、グローバルな視点で「米国・中国・日本」を比較していくぞ。その土地で生活しているとイマイチ見えにくいのが、世界から見た経済レベル。世界から見た「米国・中国・日本」とは? 給与・労働時間・物価の3つの項目に標準を絞り報告する。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
お金のために働くわけじゃないけど、それでもやっぱり気になるのが給与。上の表は、USBが調査した14職種の年収を平均化したもの。すべての職種が調査されているわけではないので、上表の金額は、各都市の概ねの平均給与として捉えて頂ければ幸いだ。

 米国・中国・日本、本誌が配布されている3ヵ国を比べてみると、やっぱりと言うか、さすがと言うか、米国が最も高給与。同ランキングには米国の都市が4つ入っているのだが、そのうちの3都市が東京よりも上に。米国で最上位だったのはやはりニューヨークだ。

 その米国3都市のすぐ後ろ、8位にランクインしたのが、日本の首都・東京。不景気、不景気と言われてはいるが、それでも世界で8番目の高級取りなのだ。しかし、住んでいると、そんな実感はまるで感じない。贅沢な悩みなのか、それとも他に何か秘密があるのか。当ランキングをじっくり最後まで読めば、答えは見つかるかもしれない。

 東京は、先進国の中では極めて税金の安い都市(すなわち、手取りの賃金が高い!)。最近日本の国会を騒がせている、なんちゃら税率。福祉大国である北欧の人が聞いたら何を思うのだろう。ちなみに、日本の給与に対する税金割合が約22~23%であるのに対し、デンマークのコペンハーゲンは約43~44%。何と日本の約2倍も高い。さらに見てみると、ニューヨークのそれは約30%、香港は約11%となっている。

 さて、現在急激な経済成長を遂げている中国は、というと、先進国と比べてしまうと、やはり物足りなく感じてしまう。中国は3都市、香港・上海・北京が対象となっており、最上位は香港。調査対象職種が大きく影響したのか、上海は奮わなかった格好だ。

 地域別に見ると、ヨーロッパ・北米が高給与。中でもスイスは、チューリッヒとジュネーブがワン・ツーを達成し、「お金持ち国」を印象付けた。中国、日本のご近所さんたち、アジアの都市は、日本の後をソウル、ドバイが追う形。低い給与が目立った東南アジアにおいては、シンガポールが気を吐いた。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
同じ職業であっても、場所が変われば評価も変わる。ここでは、中国・米国・日本、3国8都市の職種別の給与を見ていこう。

 最も面白い傾向が見て取れたのは銀行員に対する評価。銀行員の給与が世界3位の東京はもとい、上海、北京でもその評価は高く、平均順位を大きく上回る高収入職業。やはり銀行員=高収入は、全世界共通の方程式なのかと思いきや、世界経済の中心、しかもそのど真ん中にいるであろう米国の銀行員は、なぜか評価が低いという結果に。

 同じアメリカであっても、都市によって職業別の給与は千差万別。中でもニューヨークとロサンゼルスを比較してみると面白い。ニューヨークで評価の低い料理長は、ロサンゼルスでは1位。逆に、ロサンゼルスではイマイチの金属加工は、ニューヨークで1位なのだ。

 時代をリードしていく意識が強い米国はモノづくり、逆に保守的な日本は、銀行員と公務員が高収入。なんとも不思議な因果関係である。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
「日本人は働きすぎる」なんて言葉を良く耳にするが、そのホントのところはどうなのであろうか。上の2つの表は、1年間の労働時間と、労働に対する時間給(時給)をランキング化したものだ。

 まずは労働時間を見ていこう。タイトルの通り、ソウルとパリでは、年間で約1000時間も労働時間が違う。1日8時間労働として計算すると、これは約125日分。ソウルの労働者はパリの労働者よりも、ほぼ3ヶ月間分も休日を削って働いていることになるのだ。ソウルが働きすぎ、パリが働かなすぎ、それはどうあれ、1年で3ヶ月間分も違うなんて驚きだ。

 では、東京はどうだろう? 結論から言うと、ほぼ平均。米国の4都市や上海と、同じくらいの労働時間となっている。「勤勉日本人」は過去のこと。高度経済成長時代を駆け抜けたお父さんたちには、到底及ばない。それは、現在経済成長中の中国やインドの労働時間と比べて頂ければわかるだろう。

 基本的に年間労働時間が少ないのは、ヨーロッパの国々。そして悲しいかな。時給ランキングに目を移すと、そのヨーロッパ諸国の都市がズラリと上位に居並んでいる。
 
 
平均年収で世界8位だった東京だが、時給では16位にダウン。ひと昔前よりは働かなくなったと言っても、ヨーロッパ諸国と比べれば、まだまだ日本人は勤勉な人種と言える。

 スイスのチューリッヒは、年間平均給与ランキングに続き、時給ランキングでも1位を獲得。スイスに住めば、金銭的にも時間的にもゆとりのある生活が送れそうだ。

 USBの調査に、マクドナルドのビッグマックを買うのに必要な労働時間という項目がある。これの1位に輝いたのは東京で10分働けば買える。ニューヨークでは13分。上海では38分となっている。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
世界で最も物価が高い都市。手放しでは喜べない、いや、むしろ上位にランクインしてしまったらガッカリしてしまう項目。その1位に輝いたのは、東京だ。高い、高いとは聞いていたが、まさかこれほどとは…。これまで「収入」に関する数値を見てきたということもあり、余計にそう思ってしまう。

 右記の表は、高級レストランでのディナーと高級ホテルでの宿泊、いわゆる贅沢デート1回にかかる費用を比較したものだ。特別な夜に、特別な人と過ごす楽しい時間。その思い出はプライスレスかもしれないが、大人のデート、しかも「贅沢」に過ごすのであればなおさら、そこにはそれ相応の料金が発生するものだ。物価高・世界一位の東京での料金は、日本円にして約13万円(1ドル=105円で計算)。これは上海の約2倍の値段で、今回の調査で平均年収が最も低かったジャカルタの、約3ヶ月分の給与に相当する。海外から東京に戻ってきた際、現地と同じ感覚で高級店を利用してしまうと、思わぬしっぺ返しに遭うことも…。

 ランキングの上位にはロンドンやニューヨークやミラノなど、ヨーロッパ・北米の中心都市がズラリ。アジアでは20位にドバイ、23位に香港がランクインした。また、平均年収で67位だった、インドのデリーが27位に。インドという国は非常に貧富の差が激しいことで有名。富裕層に向けた高級品は、現地の庶民価格を遥かに凌駕していても需要があるというわけだ。
 東京はこの他にも、紳士服や婦人服の価格も世界1位となっている。確かに平均年収は世界8位。裕福な国であるのは間違いないのであろうが…。働けど働けど、暮らし楽にならず。その理由の一つが、物価高にあるのも間違いなさそうだ。

 日本の物価高。それは、自給自足率の低さが要因である。原材料の価格高騰に歯止めが効かない状態である今日。いつまでも輸入に頼ってばかりいては、日本の物価は上昇し続けるしか道はない。電気料金やガソリン、パンに餃子…これらは、氷山の一角に過ぎない。事態は思っている以上に深刻ななのだ。