日本の大手電気通信事業者、KDDI(株)の100%出資会社として、1996年に設立された株式会社KDDIエボルバ。
同社は、各種サポートセンター運営などのテレマーケティング事業や人材派遣業、さらには保険代理店事業やツーリストサービスなど、KDDIグループの卓越したネットワーク技術と国際的な実績および信頼をバックボーンに、幅広いビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)事業を展開。同グループの中でもトップクラスの成長企業として、順調に業績を伸ばし続けている。
 
 
“人”に深く関わる事業を幅広く展開している同社であるが、その中でも中核を担うのが、各種サポートセンターのアウトソーシング事業である。元来、サポートセンターの運営は各企業が独自に行っていたのだが、1990年代以降のネットワーク技術の急速な発展に伴い、業務の機械化が進み、システムが複雑化。また、オペレーターの教育や受付時間の延長など、運用面でも高度化したため、業務そのものをKDDIエボルバなどの専門業者へアウトソーシングする企業が増加した。
 
 
 
委託企業にとっても、これまでサポートセンター運営に要していた費用を委託費に回すだけで、複雑化していくシステムへの順次適応や人材育成の必要性もなくなり、効率的。非常に理にかなったビジネスモデルであることは言うまでもない。ただし、サポートセンター運営のアウトソーシング、ここではコールセンター業務を例にとるが、それが持つ社会的意義は、企業対企業のビジネスの域に留まらない。それは、日本の社会に大きく貢献できるビジネスモデルでもあるのだという。


 
今回は、この社会貢献について、KDDIエボルバ、執行役員・和泉氏に話を伺った。すると同氏はまず、日本社会の現状について、次のように言及した。

 「近年、日本の経済は、東京への一極化が進んでいます。これは、炭坑しかり、紡績業しかり、これまで地方が主役を担ってきた産業が次々となくなってきていることに端を発し、さらに、企業のグローバル化に伴い、大規模な工場は、中国など海外で建設されるようになった。現在、地方では、働きたくても働く場所が無いのが現状なのです。これにより東京へ“人”が流出し、一極化がますます進む。政府が国策として地方の復興を推進する背景には、こういった地方産業の衰退があるのです」
 日本を活性化させるには、まず地方に産業を生む必要性があるのだ。続けて同氏は、コールセンター事業が持つ特性と、地方との関わりについて話を進めた。

 「コールセンターは、しっかりとした運営ノウハウを持っていれば、極端な話、あとは“人”さえいれば運営することが可能です。ネットワーク環境が発達した現在においては、働き手がいるところであれば、場所を選ばずどこでも設立することができるのです。そして、老若男女を問わず働け、工場のように大型かつ高額な設備投資も必要なければ、公害を生むこともない。とても安全で効率よく雇用の場を提供することが可能な事業なのです。こういった特性から、若者の地元離れが進む地域では、コールセンター設立の招致に積極的な地方自治体も多く、弊社も、長崎県の佐世保市からのオファーを受け、同地に拠点設立に至りました。同業各社も同じで、少しでも地域の雇用創出、活性化に貢献できるよう、多くが地方に拠点を設立しています」

 また、東京など生活水準が高い都市部と比べ、地方での運営には、運営費用のコストダウンが見込めるというビジネス面でのメリットもある。これにより、取引先企業には安価でサービスを提供することが可能となるのだ。「働きたくても働く場所がなかった人」に雇用の場を提供し、実際のビジネスの相手となる取引先企業にとってもメリットが生まれる。コールセンター事業は、まさに、社会の発展に貢献しながら、企業も成長していけるビジネスモデルなのである。そして、前出の和泉氏は、同事業の究極の形は“在宅”であると、今後の同社の展望を語る。

 「小さなお子さんがいる、または親御さんの看病のためなど、何かしらの理由があり、勤めに出たくても出られないという方は、高齢化が進む日本では今後ますます増えてくると思われます。その問題を少しでも解消できるよう、現在、弊社では在宅で行える事業モデルも検討しています。困っている人の役に立てる事業、そこには必ずニーズがある。今後も社会の流れに適応し、社会の発展に貢献しながら成長していける企業を目指していきたいですね」