東京も立候補していた2016年の第31回夏季オリンピック招致レース。その開催地が、2009年10月2日、コペンハーゲン(デンマーク)で開かれた国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定した。最終選考まで残っていたマドリード(スペイン)、シカゴ(アメリカ)、東京(日本)の3都市を破って選ばれたのは、世界最大級のお祭り「リオのカーニバル」で知られるリオデジャネイロ(ブラジル)。都内の半径8km以内にほとんどの競技会場を集約させ、環境に負荷をかけない「史上もっともコンパクトで環境にやさしいオリンピック」を掲げた東京だったが、1964年の東京オリンピック以来、52年ぶりの日本での夏季オリンピック開催はならなかった。  

 東京の結果は残念だが、毎回、様々なドラマが生まれ、世界中を感動と熱狂に包み込む世界最大級のスポーツの祭典、オリンピック。今回は、このオリンピックをテーマにしたランキングを公開。夏季、冬季、過去すべての近代オリンピックにおける、メダルの累計獲得数が多い国ランキングを見ていこう。ちなみに近代オリンピックは、1896年のアテネ(ギリシャ)大会からその歴史がスタート。1924年からは冬季オリンピックも始まり、以来、第一次・二次世界大戦による中断もありながら、2008年の北京(中国)大会までに、夏季26回(戦争により3回中止)、冬季20回の計46回開催されていている。  

 
 
 
 オリンピックの累計メダル獲得数が多い国ランキング第1位は、総数2,647個(団体競技も1個で換算)と2位ドイツの1,619個を大きく引き離し、ダントツでアメリカ。同国は、第1回・夏季オリンピック、アテネ(ギリシャ)大会から参加しており、初の北米開催となった第3回・夏季オリンピック、セントルイス(アメリカ/1904年)大会では、全競技で計280個のメダルのうち、その大半を占める239個を獲得したんだとか。ちなみに第1回の参加国は、ギリシャ・アメリカ・ドイツ・フランス・イギリス・ハンガリー・オーストリア・オーストラリア・デンマーク・スイスの10ヵ国に、異なる国や地域の混合チームを加えた11チームしかなかった。それから歴史を積み重ね、2008年の北京(中国)オリンピックでは、過去最高となる204の国や地域が参加する大会にまで発展。オリンピックだけを見ても、グローバル化の進みを感じることができるのではなかろうか。
 
 さて、ランキングに話を戻すと、ドイツやフランスやイギリス、上位にはズラリとヨーロッパの国々が並ぶ。そして日本はというと、意外に高く(?)第12位。近年の中国選手の活躍を見ると、とても予想できないが、総数383個でアジア最上位にランクインしている(金メダル数は中国の方が多い)。日本は、1912年に開催された第5回・ストックホルム(スウェーデン)大会でオリンピックに初参加。初のメダルは、1920年の第7回・アントワープ(ベルギー)オリンピック。競技は、これまた意外(?)にもテニスだ。男子ダブルスで、熊谷一弥選手と柏尾誠一郎選手が獲得した銅メダルが、日本初のメダルとなった。また日本は、開催国としてもアジアで最高の実績を持っており、1964年には東京で夏季オリンピック(第18回大会)を、1972年には札幌で冬季オリンピック(第11回大会)を開催。これは夏季、冬季ともに、アジア初のオリンピック開催となっている。オリンピックを2回以上開催(日本は1998年の長野オリンピック(第18回・冬季)も含め計3回開催)しているのも、アジアでは日本だけなのだ。ちなみに、首都高速や環状七号線、青山通りなどの道路をはじめ、新幹線や東京モノレールなど、いまの東京を支える交通インフラの多くは、1964年の東京オリンピック開催に向けての都市開発により建設されたもの。いまや世界最大の経済都市とも呼ばれる東京だが、その発展にはオリンピックが大きく影響しているのだ。 
 
 さて、日本を破り、2016年のオリンピック開催国となったブラジルの順位はどうであろう。同国のこれまでの累計メダル獲得総数は84個で、順位は惜しくもトップ30には入らず、32位となった。サッカーや格闘技、F-1など、多くのプロスポーツで世界トップレベルのアスリートを排出しているだけに意外かも知れないが、オリンピック競技にはアマチュアスポーツも多い。アマチュアスポーツの発展には、国や地域、企業などの援助が不可欠。競技人口には、どうしても国の経済レベルが影響してしまうため、ブラジルがオリンピックで目覚ましい活躍を見せるのは、これからと言えるだろう。ちなみにブラジルでは、2016年の夏季オリンピックの2年前、2014年にもそれに匹敵する規模を誇る国際スポーツ大会、サッカーFIFAワールドカップを開催する。かつての東京がそうであったように、このワールドカップと2016年の夏季オリンピックの開催により、「世界都市」に不可欠な条件である、交通などのインフラが一気に整備されることが予想される。また、国際的な地位向上により、世界中の投資家から注目されることも必至だ。多くの人々に感動を与え、世界中の子供たちに夢を与えるオリンピック。そこにはプライスレスな価値があるのと同時に、経済とも切っても切れない関係にある。近年目覚ましい経済発展を遂げているブラジルが、名実ともに世界経済の中心の一角を担う国となるのは、間違いなさそうだ。