世界で最も大酒飲みの国は?
 

 一年の中で最も暑い季節、夏。ジメジメとした梅雨も明け、日本もいよいよこれからが夏本番。30度を超す厳しい暑さは、外回りのサラリーマンには地獄のような日々だが、暑いからこそ、グビッ、グビッ、ぷはぁ~。仕事帰りに飲む、キンキンに冷えたビールが最高に旨かったりもするわけだ。日本、海外を問わず、夏と言えばやっぱりビール!? この季節は、自ずと飲み屋に足を運ぶ回数も増えるというもの。そこで今回は、お酒を飲む回数が増える夏にちなんで、国民(飲酒可能年齢者)一人当たりの年間アルコール飲料消費量が多い国ランキングを調査。大酒飲みが多い国の世界ランキングを見ていこう。
 
 
世界で最も大酒飲みが多い国、その第1位は、ギネス・ビールとアイリッシュ・パブの国、アイルランドだ。その量は、一人あたり年間214.6リットル。単純計算すると、国民一人ひとりが毎日500ml以上のアルコール飲料を飲んでいることになる。また、アイルランド人の大酒飲み度合いはEUが実施した別の調査でも見て取れ、家庭の収入に対するアルコール飲料に費やす金額の割合では、EU加盟国内でダントツ1位の約4.1%(2位はルーマニアの約2.3%)。さらに、パブに行った際に飲む量を聞いた調査では、「1回5杯以上飲む」という回答が34%と、こちらもEU内で1位(2位はフィンランドの27%)なのだ。ちなみにお酒を飲む頻度に関しては、こちらは意外で、「毎日飲む」と回答した人はわずか2%。最も多かったのは「週に1回」で、41%だった。あまり飲みには行かないが、飲み始めたら止まらない、とことん飲む。アイルランド人の友人とお酒を飲む際は、こちらも相当のロングランを覚悟しておいた方が良さそうだ。

 ランキングの2位以降を見てみると、チェコやドイツ、ベルギー、イギリスなど、上位にはズラリとヨーロッパの国々が並ぶ。他の地域では9位のオーストラリアが最上位。アメリカに留学中で、同国の友人の飲みっぷりを目の当たりにしている方は信じられないかもしれないが、アメリカの順位は14位。その量は、1位のアイルランドと比べると2分の1以下となっている。

 さてさて、では日本はどうであろう。日本の順位は30位で、国民一人あたりの年間消費量は56.1リットル。これは1日あたりに換算すると、わずか150ml程度しかない。しかし、「日本人=お酒嫌いが多い」というわけではなく、むしろ日本人は基本的にお酒が大好きな人種。その証拠にお酒を飲む頻度を聞いたアンケートの結果によると、「ほぼ毎日飲む」の回答が最も多く、全体の約3割。さらに「週に3、4回程度」との回答が約14%を占めている。つまり5割近い人が、週の半分以上でお酒を飲んでいるのだ(ちなみに、「まったく飲まない」の回答は約13%)。大酒飲みダントツ1位のアイルランドより、国民一人あたりのお酒を飲む「頻度」は、むしろ多いのである。日本人は、遺伝子的に海外の人よりお酒の弱い人種なのだという。お酒は好きだが量はあまり飲めない、手軽にお酒を楽しめるのが日本人の特徴と言える。
 
 
日本から世界最大級の食品・飲料メーカーが誕生?
 
 
 

 アルコール飲料と言えば、日本では夏の初めに、同業界の大企業同士の経営統合のニュースが世間を賑わせた。ビール出荷量で日本2位と3位、世界のアルコール飲料関連企業の売上高でも、第6位と7位のキリンホールディングスとサントリーホールディングスが、経営統合交渉を開始したというのだ。もし、両者の経営統合が実現すれば、世界最大級の食品・飲料メーカーの誕生となる。
 
 
アルコール飲料業界では、近年M&Aが活発に行われており、特に大手ビールメーカー同士が、経営統合によりさらに巨大化していく傾向にある。2008年には、売上高世界第2位のインベブ(ベルギー)が、同第4位であり、バドワイザーで知られるアンハイザー・ブッシュ(アメリカ)を約5兆5千億円で買収。これにより同社(新社名:アンハイザー・ブッシュ・インベブ)は、売上高でダントツ世界1位となるとともに、それまで苦戦していたアメリカ市場の基盤も獲得。世界のビールシェアにおいて約25%を占める巨大ビール会社となった。もし、キリンビールとサントリーの経営統合が実現した場合は、同社に次いで世界第2位(2007年の売上高単純合算)の売上高を有する企業となる。

 ここ数年でビール大手企業が巨大化していく背景には、新興国をはじめとする世界市場でのシェア争いを勝ち抜くための、競争力アップの狙いがある。キリンとサントリーの経営統合においても同様であろう。少子化による人口の減少や、高齢化による健康志向の強まりにより、国内市場の需要が頭打ちとなることはもはや避けられない。今後はよりいっそう世界市場での展開が重要となってくるわけだ。国内でもいわゆる「勝ち組」とされる両者の経営統合は、先のアンハイザー・ブッシュ・インベブをはじめ、巨大化していく世界のビール大手を相手に国際競争を勝ち抜くための戦略に他ならない。キリンとサントリーは、経営統合により規模の拡大や財務基盤を強化し、競争力のアップを狙っているのであろう。

 キリンとサントリーの経営統合交渉はまだ始まったばかり。統合の条件や形態、合意時期はまだ流動的だ。しかし近い将来、一番搾り生ビールやMALT’Sといったメイドインジャパンのビールが、世界を席巻するかもしれない。