食料品の値上げラッシュが止まらない! 原材料の大半を輸入に頼っている日本は、近年の穀物をはじめとする原材料の国際価格高騰の煽りをモロに受け、ありとあらゆる食品の値段が上がっている。世界的な情勢から考えれば、それでも食べ物が買える日本は幸せな国であるのだが、それでもやはり、給料は上がらないのに出費だけがかさんでいく現状は、実に切実。各品、値上げ率は10~20円程度が大半だが、塵も積もれば何とやら。「今日は○○が安かったのよ」連日スーパーのチラシと奮闘する日本のお母さんたちにとって、これほど頭の痛い問題はないのだ。

 では、具体的に何がどのくらい高くなったのか。日本を離れて生活しているみなさんも、結構興味があるのではなかろうか。そこで今回は、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう商品を中心に、日本の食料品の値上がりの現状を報告する。中にはアメリカや中国で販売されている物もあるので、現地の価格と比較してみるのも一興。「ポッキーが4本減ったらしいよ」など、友人とのお喋りの話題に使って頂ければ幸いだ。



 
 
 
 
 
宇宙を体験した
カップヌードルも
小麦の高騰には勝てず


 世界で最も食される穀物、小麦。この価格高騰により、パンの値段が全世界で高騰しているのは周知の通り。エジプトではパンが手に入らないことで、死者を出すほどの暴動が起きるなど、世界中で深刻な問題となっている。

 日本でも小麦を原材料とするパンや麺類の値段は概ねアップ。宇宙食としても知られ、世界中で販売される日清食品のカップヌードルも、15円値上げされた。つい先日までは、150円すらしなかったような気がしなくもないが、カップラーメンはレギュラーサイズが170円。BIGサイズは190円というのが今の日本の相場だ。そしてチキンラーメンなど、袋麺もついに1袋100円時代に突入。幸い卵の値段はまだ変わっていないため、卵+チキンラーメン、あの至極の組み合わせは、まだ100円強で味わえる。
 
 
 
 
 
 
 
カカオの価格高騰で
ポッキーが4本減った!!


 クッキー、ビスケット、スナック菓子など、小麦を原材料とするお菓子のほか、カカオ高騰の影響を受けた、チョコレート菓子の値上げも相次いでいる。カカオの国際価格は、3年前と比べ約1.7倍にアップするなど急騰中。ヨーロッパではこの問題に対する関心が高く、特に、国民一人あたり年間11キロものチョコレートを消費すると言われているスイス国民にとっては、切実な問題となっている。

 日本でのチョコレートの値上げは、値段は上げず、内容量を減らすという、減量策で対応しているメーカーが大半だ。お菓子はあくまでも嗜好品。そのため、値段の手頃感をそう簡単に変えることはできない、という見解からだ。具体的に商品を見てみると、ポッキーは38本から34本へ4本減量。ふむふむ。確かに、値段が上がるよりは許せる気がするのは私だけであろうか。
 
 
 
 
 
 
 
ハーゲンダッツが
より一層高級品に!


 乳製品に関しては、むしろもっと値上がりしても仕方なし。そう思わせるだけの事情がある。というのも、牛の飼料はトウモロコシが主原料となっているのだが、現在、そのトウモロコシの価格が急騰。飼料価格が高騰している影響で、日本の酪農家たちは切迫した状況に追い込まれ、飼料が買えないために、牛の頭数を減らす者、さらには牧場をたたむ経営者も続出しているのだ。政府も補助金を出すなど対策しているが、追いつかない状況だ。

 これら状況を受け、乳製品は軒並み値上げへ。特にチーズやバター、さらには油脂の原材料である大豆の高騰とのダブルパンチを受けたマーガリン等の加工品は、値上げ幅が大きくなっている。アイスクリームも例外ではなく、本格的な夏の到来を目前に控え、庶民の贅沢品であるハーゲンダッツは、さらにその価値を高めた格好だ。
 
 
 
 
 
 
 
ビールや果汁ジュース
飲料にも値上げの波


 大麦やホップの国際価格高騰により、世界中で値上げが相次いでいるビール。日本はまだ、発泡酒や第3のビールという、安価でビール風味が味わえるアルコール飲料があるだけ幸せなのかもしれない。ちなみに日本でも良く知られている米国や中国のビール、バドワイザーと青島ビールの日本での値段は、店頭小売り価格(350ml缶)でそれぞれ221円と270円である。

 また、飲料では果汁100%ジュースが値上げ。輸入果実の国際価格高騰が理由だ。

 そして、ちくわやソーセージ、シーチキンなど、一部水産加工品も値上げされている。これは、欧米で健康食として「魚」の需要が拡大したのが要因の一つ。漁獲高の減少も手伝い、特に白身魚のすり身は希少価値が高まっているという。これを受けマルハのちくわは、5本入りから4本入りへ、1本の減量となった。
 
 
昨年の中頃から始まった、日本の食料品の値上げラッシュ。そもそも、その理由は何なのであろうか?

「昨今の原油価格高騰によるバイオ燃料の需要拡大、新興国の経済成長による世界的食糧需要増、世界的な異常気象による農作物の収穫量低下等により、乳製品や農産物等の原材料価格、資材価格、エネルギーコスト等が大幅に上昇し、この状況は中長期にわたり継続するものと見込まれます」(日本ミルクコミュニティ株式会、プレスリリース。2008年1月25日「市乳商品希望小売価格改定のお知らせより一部抜粋)

 これは乳製品メーカー・日本ミルクコミュニティ株式会社が、価格改定時に発表したリリースから一部抜粋したものだ。今、世界中で話題となっているバイオエタノール問題や、オーストラリアの大干ばつによる収穫量の低下。それに反して拡大する需要。原材料の高騰は様々な要因から起きている。そして同社に関わらず、値上げを決断したメーカーのほぼ全社が、原材料の高騰と合わせ、燃料の高騰を理由に挙げた。

 2005年からのわずか3年で、石油の国際価格は2.3倍に上昇している。輸送費をはじめ、至るところで必要となる燃料費の高騰。これに原材料の高騰まで重なってしまっては、各メーカーともお手上げ。値上げするしか方法がなかったといわけだ。ちなみにこの燃料の価格高騰を受け、タクシーの初乗り料金(東京都)は660円から710円へ一気に50円も値上げ。意外なところでは、銭湯の入浴料(東京都)も20円値上げされた。いやはや、何をするにもお金がかかる時代だ。

 しかし、もしも値上げで済まなくなったら。世界的な食糧不足が囁かれている今。食糧や燃料の大半を輸入に頼っている日本の食卓はどうなるのであろうか? 農林水産省がまとめた「食料自給率レポート」の中に、面白い記事を見つけた。もしも、輸入品が手に入らなくなったら。1日1人あたり2000キロカロリー取得するためのメニュー。その一例を紹介しよう。

 朝食は茶碗1杯のご飯と蒸かしいも2個に、ぬか漬け1皿。昼食は焼きいも2本に、蒸かしいも。そしてディナーでようやく焼き魚が1切れ楽しめる。副食には、またまた「いも」だ…。欧米では日本で言うところの「米」の代わりに「いも」が食べられることが多いが、もしも輸入がストップしたら、我々は「いも」をメインデッシュにお米を食べることに…。何とも口の中がパサパサしそうな組み合わせだ。こんな時、日本人の心である「みそ汁」があれば救われるのだが、同状況下では「みそ汁」は2日に1杯しか頂くことができない。お肉に至っては9日に1食と、かなりの贅沢品だ。ちなみにこのメニューから得られる熱量は、昭和20年代後半とほぼ同程度だとか。

 値上げで済んでいるだけ、まだ幸せ。もしも輸入品が手に入らなくなったら、日本の食卓は戦後にタイムスリップすることになる。