ワールドキャリア式
 
 
 

  就職先企業を選ぶ場合、あなたは何を基準にしますか?
働きやすさ? 給料? 経営者?今回、ワールドキャリアでは、
独自の視点からセレクトした企業ランキングを発表します。
恒例の『就職ブランド調査』の人気企業ランキングと比べながら
企業選択のヒントにしてみよう!
 
 
11位~100位
 
 
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金融系企業が飛躍した最新人気企業ランキング
今年4月、学生たちにとってお馴染みの『就職ブランド調査』の結果が発表された。株式会社リクルートが毎年実施するこの調査は、大学生の企業選びに向けた動向を明らかにする、極めて注目度の高いリサーチ情報だ。
 その内容を見てみると、2009年3月卒業予定大学生の就職志望企業総合ランキング1位は、特に女性からの支持が高かった全日本空輸。以下、三菱東京UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ、東海旅客鉄道と続き、5位には三井住友銀行が入った。みずほ、三菱東京UFJの2社は、総合職を志望する男性からの人気ベスト2という結果になっている。総合ベスト5の中に3大メガバンクが揃ってランクインした背景には、バブル崩壊ショックからの再建が進むここ数年間に、積極的な新卒採用を続けた好印象が学生達の間にあるためだと、調査元のリクルートは分析している。
 また、昨年の35位から8位に上昇したソニーと同様、今年20以上のランクアップを果たしたのが損害保険ジャパンと三井住友海上火災保険。損害保険ジャパンは一般職志向の女性からトップの支持を受けるなど、損害保険会社の人気が高まったのも、今年の調査結果に見られる特徴的な傾向である。
 
" 自分がどうなるか" が企業選択のポイント?
ここで注目したいのが、学生たちが何を求めてこれらの企業を選択しているかということ。同調査では「企業を選ぶ際に重視する点」についてもリサーチし、職場となる企業の魅力を学生たちがどう感じているかということにも踏み込んでいる。その結果から明らかになったのが「自分を大きく成長させられる」「自分がやりたい仕事ができる」「職場に活気がある」といったポイントを、学生たちが重視しているということだ。また「給与・福利厚生など待遇が良い」「雇用が安定している」の2項目が昨年よりも重視傾向が高まった他、「仕事もプライベートも充実させられる」「一緒に働きたいと思える従業員がいる」というものが上位に入る結果となった。
 この結果からは、学生たちが最も大事に思っているのは「その企業に入った自分がこれからどうなるか」という点であり、「就職先となる企業はどうなるか」よりも重要な企業選択の基準となっている印象を受ける。もちろん、これから10年先の経済状況予測も難しいとされる中で、個別企業の業績予想よりも自分自身の成長の可能性を学生たちが基準にしたと考えても不思議ではない。しかし、企業の将来性や成長の可能性を測る有用な指標があれば、それを自身の志向とマッチングさせることで、これからの活躍の舞台として選ぶための大きな基準となることは間違いないだろう。
 そこで今回ワールドキャリアでは、新たな選択基準としての指標を抽出してみた。そのキーワードは“海外”である。
 
これからの企業選択は "海外" がキーワード!
今回ワールドキャリアが注目したのは「海外における事業の比重」。次ページには、リクルートの『就職ブランド調査』に登場した上場企業を対象に、東洋経済新報社『会社四季報2008年3集』から海外売上に関する情報を収集し、その比率の高さを基準にした“ワールドキャリア式企業ランキング”を掲載した。このランキング表には『就職ブランド調査』での順位の他、その企業全体の売上高に占める海外事業の売上比率(以下・海外比率)と海外事業の売上額。そして内外問わず会社の実力がはかれる営業利益が表示されているので注目してほしい。
 その表を見ると、実に興味深い特徴が表れている。その特徴の一つが「自動車業界企業のランクイン率」だ。日本を代表するモンスター企業・トヨタ自動車はもちろん『就職ブランド調査』でも6位に入る人気だが、本田技研工業や日産自動車などが上位に入り、その海外比率は実に80%を超えている。ではなぜ、こうした企業の海外比率が高くなっているのだろうか。
 
 
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11位~50位
 
 
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市場としての海外が今後の企業成長のカギ
WC式企業ランキングの指標となった“企業の海外比率”について、上場企業の最新情報、業績予想をレポートする『会社四季報』の編集長・安西達也氏に話を聞いた。
「事業の大きな流れとして、国内よりも海外に目を向けている企業の方が、成長性が高いと私は思っています。もちろん業種によって全く違って、国内での事業を伸ばす企業もありますが、全体としては海外重視の企業に大きな可能性があるのではないでしょうか」
 その背景にあるのが少子高齢化であり、国内のマーケット拡大の頭打ち感であると安西氏は語る。
「高齢化に対応した産業など、特定の分野では高成長の可能性はありますが、全体として見た場合の日本国内の市場規模は、そんなに大きくならないはずです。GDPの潜在成長率が1・5~2・0と言われている日本の市場の成長性は、BRICsなどの新興国にははるかに及ばないというのは常識的な考えだと思います。だからこそ“海外で通用する企業”が大きく伸びていくと考えているわけです」
 海外での売上という言葉からは、モノづくりにおける日本の強さが定着している製造業をイメージするかもしれない。しかし現在は製造業だけではなく、様々な業種の海外進出という新たな流れが出てきていると、安西氏は指摘する。
「ソフト開発といった事業で海外に進出している場合、国内で不足している、あるいは優秀であるという理由から、海外の“人材”を活用するという流れが一つあります。そうしないと企業として生き残れないという側面もありますが、現在ではそれに加えて“市場”としての海外という要素が大事になってきているわけです。要するに、日本の製品・サービスを海外に輸出するだけではなく、現地に根を下して、その可能性のあるマーケットで展開する事業を考えていくという流れも、最近は一般的になってきているんです」
 もちろん製造業に比べると、日本の非製造業は国際的な競争力が高くないというのが一般的な意見。実際に非製造業の分野において、世界的な日本企業はまだ少ないのが現状だ。言い替えれば、その非製造業の海外における成長性が、日本の経済成長のカギを握っているということなのだろう。
 
ワールドキャリア的注目業界はこれだ!
では具体的に、海外マーケットで強みを発揮する業種にはどんなものがあるのか。安西氏によれば、国内では縮小の傾向にある自動車産業は、海外展開に可能性を見出す一つだと語っている。
「少子高齢化に加え、若者の自動車離れが進んでいることもあって、国内の自動車マーケットは縮小しています。しかし世界的に考えると、自動車の分野は成長産業と言えるでしょう。中国では今後、相当な自動車ニーズが発生するでしょうし、他の新興国も同様です。そうなった時に、高級車を中心に揃える海外のブランドよりも、大衆車にも強い日本ブランドの方が圧倒的に有利でしょう。新興国であれば大衆車の需要が量的に大きいわけですから、日本のメーカーは相当大きな可能性を秘めていると思います」
 日本国内では苦戦を強いられながら、海外に大きなチャンスを見出すのは自動車産業だけではない。かつての花形産業でありながら、80年代頃からは“衰退産業”と思われていた機械・鉄鋼などの重厚長大型産業も、海外での高い需要を背景に躍進を続けている。
「建設機械や工作機械などは、どちらかというと国内型の産業でしたが、今は完全に逆転して海外の比率が高まっています。その要因は、インフラ整備の需要が高い中東や東欧といった地域で売上を獲得していること。この現象は、プラント建設や、さらには鉄鋼の分野でも起こっています」
 需要の高いマーケットに、技術力の高い日本企業が進出する。高度経済成長期に見られたこの図式が再び現実となり、まさにその頃強かった産業が海外に舞台を移し、業績を伸ばしてきているのである。
「日本の技術力は相当に評価されているので、今後の展開には大きな期待が持てると思います。後は、新興国での需要が高まるという意味では、家電・エレクトロニクスの分野で、どんな日本企業が海外で存在感を増してくるのかにも注目しています」
 
海外 のみならず企業選択に必要なこと
一方で『就職ブランド調査』で上位に進出した金融系企業について聞いてみたところ、可能性の高さを安西氏は指摘してくれた。
「以前は常に人気があった損保会社も、規制緩和から始まった自由競争によって利益的に厳しくなり、労働環境も悪化して人気も落ちてしまったのだと思います。私が損保会社に可能性を感じるのは、やはり海外への進出を積極的に行っているからです。銀行に比べてバブルの崩壊による痛手が小さかった損保業界は、財務体質へのダメージも少なく、海外企業の買収を進める体力が残っていたわけです。一方で国内のマーケットを考えると、リスク細分型の自動車保険が伸び、既存の損保会社は国内では防戦一方という状況になってきています。そこで成長を求めて海外に進出しているのだと考えられますし、これから業績を伸ばす可能性は大きいと思います。銀行業界は、バブルの後遺症がかなり大きかったために、回復してはいるものの海外の金融機関と比べると劣勢にあったわけです。しかし、サブプライムの問題に関して痛手の少なかった日本の銀行に対する評価は徐々に上がっています。まだ世界的な競争力を備えるまでには達していませんが、金融業界の成長性は高いと思います」
 しかし『就職ブランド調査』でランクアップしたのは、企業としての将来性、海外での可能性の高さを反映した結果ではない。この調査に見られる傾向について、安西氏は次のように語る。
「やはりBtoCの企業が中心ですし、それは当然のことだと思います。自分が手にする商品のメーカーや、日々接するサービスの提供企業を評価することから始まって、そこから自分なりの調査を行うことが大事だと思います」
 日本企業に対する国際的な評価を測る際には、関心度合いの一つの基準となる海外投資家率に着目するのも有効な手段。また、興味を持った企業の決算情報を調べ、セグメント情報にある海外売上高、海外比率を見れば、その企業のビジョンが見えてくるはずである。
 最後に、就職企業を選ぶ際のヒントや心構えについて、安西氏にアドバイスしてもらった。
「ここまでの話と矛盾するかもしれませんが、何よりも関心がある業界や会社にこだわった方がいいと思います。ただ、その関心を今の生活だけに限定せず、もう少し広く、将来も考えながら選択していくべきだと思います。先ほどの話にもありましたが、一時期衰退した企業が再評価されるなど、30年後にその企業がどうなっているかは分りませんよね。そういう意味では、自分の関心や興味を大事にして、そこにこだわりを持って様々な取り組みをしながら、企業を選んでほしいと思います」
 
 
『会社四季報』編集長
安西達也氏

 1979年に大学を卒業後、女性誌出版社を経て、87年に東洋経済新報社に入社。業界記事を担当する産業部(現・企業情報部)、『週刊東洋経済』編集部などを経て、『金融ビジネス』編集長、『株価四季報』編集長に。
06年12月より『会社四季報』編集長。
 
 
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 『会社四季報』は、日本の株式市場に上場する全3900社の情報を網羅し、四半期ごとに発行されている。決算データ、企業情報の他、オリジナルの業績予想を掲載し、多くの投資家やビジネスパーソンに圧倒的な支持を得ている。また、英語版の四季報『JAPAN COMPANY HANDBOOK』も発行されており、日本企業の情報を英語で解説。


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