今日のグローバル社会においては、国をまたいでの転勤だって日常茶飯事。「生活環境が変わったって何の苦にもならないさ」、鍛え抜かれたビジネスパーソンからは、そんな心強い言葉も聞こえてきそうだが、とは言っても、国によって物価が違うわけで、さらには通貨の価値だって変わる。ともすれば、当たり前ではあるが、国をまたいで転勤した場合、これまでと生活にかかる費用も大きく変わるというわけだ。これは、何も転勤に限った話だけではなく、もちろん旅行中だってそう。「えっ!? コーヒー1杯が10ドル以上!?」と、転勤先や旅先で物価の違いに驚かないよう、ここでは米コンサルタント会社マーサーが毎年実施している「世界生計費調査」。その2008年版の生活費が高い都市ランキングを、過去3年間と比較しながら見ていこう。

 同調査では、6大陸143都市において住居費、交通費、食料、衣料、家庭用品、娯楽費用などを含む200品目以上の価格を調査。その価格をアメリカ・ニューヨークを基準に、それぞれ比較して導き出されている。
 
 


                               2009年2月号(1月26日発行)




1位~10位
 
 
11位~40位
 
 

                                      ※N.Y=100
 
 
 
 
 さて、生活費が高い都市ランキング2008、その第1位は3年連続でロシアのモスクワとなった。同地でかかる生活費はニューヨーク比142.4%で、これは昨年の同調査よりさらに8%高くなっている。調査元のマーサーによると「モスクワの生活費上昇の要因は、USドルに対するルーブル(ロシアの通貨)の価値が上がったことと、ロシアにおける住宅価格の上昇によるもの」とのこと。ちなみに、モスクワではコーヒー1杯が約10ドル、外国語の日刊新聞1部が約6ドルと、ニューヨークの実に約3倍近い金額。何はともあれ、会社からモスクワへの転勤を言い渡された際は、少なくとも1.4倍の給与は請求しておきたい。そうしないと、思わぬ貧乏くじを引くことになるかもしれない。

 モスクワに次いで第2位にランクインしたのが、日本の首都・東京。物価が高い国として知られる日本は、東京のほか11位に大阪が入った。世界中の名だたる大都市を抑え、東京と大阪がワン・ツーを達成した2005年以来、序々に水準が下がっていた日本だが、2008年は原材料の高騰による生活用品の値上げラッシュが続き、さらに追い打ちをかけるように円高がみるみる進んだ。これにより外国からの訪問者にとっては、再び生活費のかかる国となってしまったようだ。ちなみに、東京でひと際他の都市より高額だったのが住宅費。その他、交通費や飲食費は、3位のロンドンよりもむしろ安価であった。

 2位の東京以降は、ロンドン、ソウル、香港やジュネーブなど、ヨーロッパやアジアの大都市が続き、21位にシドニー、そしてそのすぐ後ろ、22位にようやく同ランキングのベース都市であるニューヨーク(昨年は15位)が入った。2008年版では、アメリカの都市は軒並み順位を下げているのだが、その要因はもちろん、USドルの価値が他の主要通貨に対して低下していることに他ならない。ちなみに、アメリカのその他の都市は、ロサンゼルスが55位、マイアミが75位、ワシントンDCが107位だった。

 2008年版のランキングは、USドルの価値が低下していく中、安定した自国通貨を持つ国の都市が、上位にランクインした格好だ。4位に入ったノルウェーのオスロが良い例で、同都市は昨年まで3年連続で10位だったのだが、原油高の高騰を受け、ノルウェークローネの価値が跳ね上がったのを受けてジャンプアップとなっている。世界的な金融危機の影響で、世界経済の情勢はここ最近で大きく変わっている。数年前と同じ感覚で出張や旅行に出かけると、出先で思わぬカルチャーショックを受けるかもしれないので注意しよう。

出展:2008年 マーサー世界生計費調査ー都市ランキング