みなさんは、子どもたちが学校で学ぶのに、一人あたりどのくらいの「お金」がかかっているか知っていますか?

学校における教育費用、これは、大きく「公財政教育支出」と「私費負担」の2つからなる。読んで字のごとく、前者は国からの補助金であり、後者は概ね家計負担分だ。「もう、ホントに学費が高くて困っちゃう!!」という、家庭の悩みはひとまず置いておいて、ここでは、国も家計もひっくるめた金額。子どもたちが実際に学校で、どのくらいの「金額」の教育を受けることができているのか、その平均を国別で見てみよう。

今回はOECD(経済協力開発機構)加盟国30ヵ国のうち、データ不十分のカナダ、ルクセンブルク、トルコの3ヵ国を除いた27ヵ国を対象に、初等教育、中等教育、高等教育の3カテゴリーにおける、一人あたりの1年間の学校教育費を調査。各カテゴリー別に金額の高い順にランキングした。各カテゴリーの呼称は国によって異なるのだが、参考までに日本を例にとると、初等教育は小学校、中等教育は中学・高校、そして高等教育が大学(短大を含む)となる。高校なのに中等、高等なのに大学と、ちょっと紛らわしいので混同しないように注意しよう。

※OECD加盟国…アイスランド、アイルランド、アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロヴァキア、チェコ、デンマーク、ドイツ、トルコ、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、メキシコ、ルクセンブルク、韓国、日本
 
 




教育環境が充実している国ランキング
 
 
さて、ランキングを見てみると、すべてのカテゴリーでアメリカ、スイス、そして北欧の国々が上位に名を連ねた。国によって生活水準に差があるため、一人あたりに多くの学校教育費を使っているからといって、充実した教育が受けられているとは一概には言えない。しかし、どの程度の環境で学ぶことができているのか、その一つの指標と捉えることはできるだろう。教員の人数や施設、研究設備等、これらはやはり、お金をかけるほど充実させられると考えられるからだ。少なくともランキング上位の国々では、世界トップクラスの環境で子どもたちが教育を受けることができていると考えて問題なさそうだ。また、特に高等教育に費やされる費用には、国ごとに大きな開きが見られた。第1位のアメリカは、OECD平均の2倍以上の金額。充実した教育の場を求め、世界中の多くの学生が海を渡り、アメリカの大学への進学を希望するのも頷ける。

 では、気になる我らが日本はどうであろうか。日本の順位は、初等教育が9位、中等、高等教育はともに11位。何とかすべてのカテゴリーにおいてOECDの平均を上回っており、とりあえずはひと安心。日本は世界的に見ても、恵まれた教育環境を持つ国であると考えて問題なさそうだ。多くの子どもが公立の学校に通う小学校時代は、「ほとんどお金がかからない」というイメージがあるが、それはもちろん公的資金が補ってくれているだけ。実際には、一人あたり年間で約6700ドルもかかっているのである。小学校時代を思い起こしてみると、確かに、理科の授業では様々な資材を使って頻繁に実験を行わせてもらったし、音楽では楽器を使った授業もあった。先生もたくさんいた。さらにはプールや体育館に図書室といった施設まで完備している学校も多い。ちなみに筆者の学校は、公立であったにも関わらず温水プール完備!! 今現在、まるで泳ぐことがない現状を考えれば、それにどれほどの意味があったのかどうかは、この際別問題。子どもの頃はまったく気にもしていなかったが、とにかく日本の教育環境は世界トップクラスなのである。

 ともあれ、だからといって「日本って素晴らしい」と、目を輝かせるのはちょっと早い。考えてみれば、そもそも日本はアメリカに次いで世界第2位の国内総生産(GDP)を持つ国だ。ともすれば、学校教育費だって、本来ならもっと上位にランクインしてもおかしくないはずだ。OECDの調査に、こんなデータも記載されていた。「GDPにおける教育費の公的支出の割合」。詳細は別の機会で報告するが、その内容を見てみるとOECD加盟国の平均が5.8%であるのに対し、日本のそれは4.3%(ちなみにアメリカは6.7%)。平均を大きく下回る数字となっていたのだ。順位では28ヵ国中23番目。これがどういうことを意味するのか考えてみると、日本は一定の教育環境は整っているが、OECD加盟国の中では、どちらかというと教育に力を入れていない国、ということになるのではなかろうか。日本の将来を担う大事な大事な子どもたち。学力が低下している、とただ騒ぐだけではなく、もっともっと国を挙げて子どもたちの教育のことを考える必要がありそうだ。


出所:図表でみる教育(Education at a Glance)OECDインディケータ2008年版