2009年に入り、世界の主要自動車メーカーが2008年度の新車販売実績を発表。その結果、日本のトヨタ自動車が米ゼネラルモーターズ(GM)を抜き、創業から約72年にしてはじめて、年間販売台数で首位に立った。ちなみに、GMが同分野でトップの座を明け渡すのは78年ぶりのこと。これでトヨタは、すでに世界一となっていた生産台数・売上高・純利益と併せ、主要業績すべてにおいて年間世界一となることは確実。名実ともに世界一の自動車メーカーの称号を手に入れることになる。ともあれ、この結果を手放しで喜んでいられるほど、今日の自動車業界が置かれている状況が良くないことは、みなさんもご存知の通り。世界同時金融危機により、深刻なダメージを受けている自動車業界。その影響は数字からも見て取れ、1位、2位以外でも、2008年度の世界自動車販売台数ランキングは、1年前から順位に大変動が起こっている。ホンダや日産、その他日本勢の順位は? 連日報道を賑わす米ビッグスリーは? 今回は、各社発表資料(速報値含む)を基に作成した、激動の2008年度版世界自動車販売台数ランキングを見ていこう。
 
 
 
 
すでにお伝えした通り、ランキングの1位はトヨタ自動車、そして2位はGMだ。出資会社分を販売台数に含む含まないなど、発表値の基準が各社で違うことから、アメリカの専門誌では、2007年度も実質的にはトヨタが世界一だったという見解を示していたが、何はともあれ発表値でトヨタが1位に輝くのは今回が初めてのことだ。10年前のトヨタの新車の販売台数は約460万台で、首位GMより300万台以上も少なかった。だが、ダイハツ、日野の子会社化に加え、中国の広州工場、フランス工場、米テキサス工場、ロシア工場などを稼働させ、現地生産体制を強化。また、1997年には世界初の量産型ハイブリッド車、プリウスの市販を開始し、以来環境問題への対応でも業界をリードし続けている。08年のトップは、GMの大幅な落ち込みを受けての結果かもしれないが、トヨタが近年、持続して好調な販売を維持してきたのは、こうした背景があってのことなのである。

 また、トヨタの他にも日本勢は、6位にホンダ、7位に日産、10位にスズキと、トップ10内に計4社がランクイン。原油の高騰や世界同時金融危機により、自動車の需要が急激に冷え込む中、低燃費を実現した日本勢の車は、何とか減少を最小限で食い止めた格好だ。環境問題への対応で業界をリードしていることは、今後も日本勢の強みとなりそうだ。逆に、大型車が中心だった米ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)は、北米市場で消費者に燃費の悪さが敬遠され、傷口を大きく広げてしまった。

 ランキング全体を通して、前年より販売台数を落としている企業が目立つ中、微増であれ販売を伸ばしたのが、フォルクスワーゲン(ドイツ)、現代・起亜自動車(韓国)、ホンダ、日産(ともに日本)の4社。これら企業に共通して言えることは、中国をはじめとする新興国での販売が堅調だったことだ。フォルクスワーゲンは、中国での販売を2ケタも伸ばし、同社の年間最高販売台数を更新。日産も、中国のほかロシアでプラスを確保している。またスズキは、陰りが見え始めたとは言え、インド市場に最大のシェアを持ち、北米依存度が低いことから、マイナスを最小限に食い止め、トップ10入りを果たした。

 逆に深刻な落ち込みを見せたのが、北米を主戦場とする前述の米ビッグスリーだ。これまで77年間トップの座に君臨してきたGMは、前年比-10.8%で2位へ後退。フォードは-17.5%で、初めてトップ3から降格してしまった。さらにクライスラーに至っては-25%と最も落ち込みが大きく、トップ10内からも姿を消すという結果に。政府の援助により何とか一命は取り留めたものの、各社とも巨額の赤字を抱えており、経営破綻をまぬがれるには、資産の売却や資本提携は必須。2009年の世界の新車市場は、昨年よりさらに厳しくなることが予想されており、米ビッグスリーにとって09年はまさに正念場となりそうだ。

 またこれは、日本勢を含むその他の自動車メーカーにとっても他人事ではない。北米や欧州を中心とした市場の縮小を受け、09年は、合併や資本提携を含む業界の再編成が加速することも予想される。こうした合併、提携の動きに加え、環境問題への対応や、新興国への展開が、今後の自動車業界の勢力図を占う上で、重要なカギとなりそうだ。


出所:各社発表資料(速報)