「科学のドロン!でいい未来」
科学の力を駆使して、夢の未来を現実にしてきた三井化学。
そのさまざまな技術は、世界中の人々の暮らしに浸透。人々に気づかれないところで、しかし、なくては成り立たないと言えるほど、人々の暮らしに大きな役割を果たしている。
身近な自動車もしかり。強度や耐熱性など、性能の向上に直結する素材を数多く提供しているのだ。


三井化学が手がける自動車部品用素材

自動車の細部に目を凝らしてみると、
さまざまなところで三井化学の素材が使われているのがわかる。
 
 
日本を代表する総合化学メーカーである三井化学。
「化学」「革新」「夢」をキーワードに未来を切り開く同社だが、BtoB企業である性質上、その活躍が直接我々の目に触れる機会は少ない。しかし、実は、文明生活の土台である“素材”という角度から、我々の日常を幾度となく一変させてきている。

 例えば、三井化学が開発した、紙のように折り曲げられる極薄の電子基盤用材料、ネオフレックスは今や小型化が進む携帯電話に不可欠。またディーゼルエンジンの排ガスを浄化する不思議な水溶液、アドブルーは地球環境にも貢献する優れものだ。また、ファッション業界においても、三井化学の開発による新しい繊維や樹脂素材は、それまでになかった斬新なデザインを可能にしてきた。

 ほかにも衣食住から最新エレクトロニクスまで、我々が生活の中で次々に経験する“新しい!”の裏側には、三井化学に活躍が隠れていることも少なくないのだ。

 このように、ありとあらゆる分野において、素材による“革新”を提供する三井化学では関連会社を、50以上擁している。

 その中で今、最もグローバルな躍進が期待されている関連会社の一つが、自動車のインテリアからエクステリアに多様される合成樹脂、ポリプロピレンを開発するプライムポリマーだ。
 
 
 
2005年に三井化学が出光興産と合弁で設立した同社は、現在ポリプロピレンの国内生産高第1位を占めている。世界市場でもそのシェアは第7位である。

 三井化学は1958年、石油精製品ナフサから、ポリエチレンの原料となるエチレンを生産することに日本で初めて成功。以来、日本のプラスチック業界の先駆者として、リードをしてきた。

 石油高や、激しい価格競争により、かつて14社あったポリプロピレンメーカーが、ここ15年で4社にまで淘汰される中、安定したクオリティで競争優位に立った三井化学が、ジョイントベンチャーを仕掛けたのには、世界市場を見据えた野望があったためだ。
 
今村尚平さん
 
そんな中、キーパーソンとしての役割が期待されているのが今村尚平さん。
マサチューセッツ州立大学に4年間留学し、帰国後、三井化学に入社。留学で培った今村のグローバルな視野に白羽の矢がたち、現在はプライムポリマー社自動車材部に出向している。

 「個々の社員一人ひとりの器量と日本人の武器である団結力で、世界を相手に社を一丸として戦っていきます。」と意気込む。

世界を見渡せば、中国の自動車材市場は、既に過当競争に入り、最低30万円の自動車も登場したインドでも、価格競争時代が到来。一方今村は「価格競争にはあえて挑まず、クォリティで勝負していきたい」と語る。
 
 
 
日本市場ではこれまで、各クライアントのそれぞれの製品にカスタマイズした素材を開発し、クライアント密着型の企業として、小回りを利かせた展開で地道にシェアをのばしてきた同社。今後、世界市場で優位性を発揮していく為には、自社の強みを生かした戦略が必要となってくる。

「そこで現在、我が社で進めているのが『グローバル同一品質体制』です。これは世界各地の工場をもつ自動車メーカーに対して、すべての生産拠点に同一品質のポリプロピレン素材を提供するというもので、クライアント企業が全世界においてムラのない生産を実現できる、事業戦略です」(今村)

 この体制を支えるため、プライムポリマーでは、既に米国、メキシコ、中国、タイ、インド、ドイツに工場を設けている。これまで同社が取り組んできた、クライアント密着型の開発体制をいかし、かつスケールアドバンテージも得られるという戦略である。

 効率重視の外資大手とは一線を画す同社の品質には評価も高く、すでに世界の自動車メーカーから複数の引き合いもきている。自動車樹脂界で日本発の世界基準となるか。今後の展開から目が離せないところだが、日本の樹脂業界を代表してきた三井化学の遺伝子は今、世界市場へと確実に受け継がれていく。
 
 
 
聞きなれないけど実は馴染み深い合成樹脂、ポリプロピレン

五大汎用樹脂のひとつにも数えられるポリプロピレンは、どんな形にも成型自在で、用途次第では強度にも優れ、しかも安価という特徴を持つ。
プリンの容器やラップから、タバコの包装フィルム、車のバンパー、そして一部の国の紙幣にいたるまで、全てこのポリプロピレンでできている。
 
 
これまで、食品加工業界から自動車業界まであらゆる産業を一変させてきたポリプロピレンは、現在では、地球上に存在する人口材の体積比で、すでに鉄を凌いで第1位となっているという試算もある。
我々現代人が日常生活において、最もよく目にしているかもしれない物質なのだ。