世界に誇る最先端技術と、斬新かつ革命的なアイデアで、常に新しいサービスを提案し続けているNTTドコモ。日本のみならず世界の携帯電話シーンをリードする同社は、日本のモバイル業界の最大手であると同時に、最近15年で最も成長した日本企業でもある。2008年5月13日現在、同社の時価総額は約7兆円に及ぶ。

 NTTドコモが母体であるNTTから分離独立したのは、今から約16年前の1992年7月のことだ。すなわち同社は、20年にも満たない歳月で、先述の時価総額を築き上げたことになる。この短期間で、日本を代表する企業へと急成長を遂げることができた要因。それが、近年の携帯電話の爆発的な普及だけによるとは考えにくい。そもそも、携帯電話はなぜ、これほどまでに普及したのだろうか。

 同社の成長の軌跡を追うと、一つの結論に辿り着くことができる。それは、携帯電話の普及も、ドコモの急成長も、決して時代の流れなどという「偶然」の産物ではないということ。ドコモが発信した3つのサービスから垣間見ることができた。
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
NTTドコモが、独立した一つの企業として産声を上げた1992年当時、日本で普及していた携帯電話台数は約200万台(総人口の約1.3%の普及率)に留まっていた。携帯電話の商用サービスが開始された1979年から、すでに13年が経過してのことだ。

 これまで、携帯電話の普及が伸び悩んでいた最たる要因。それは「高額な利用料金」に他ならない。その間に採用されていた料金体制であるレンタル制度では、契約時に保証金として約10万円が必要だったなど、初期費用がとにかく高かった。加えて、月額の使用料も今とは比べ物にならないほど高額だったため、携帯電話を持てるのは、経済的に豊かな一部の人々に限られていたのだ。

 しかし1994年。NTTドコモが打ち出した新しい料金体系「お買い上げ制」の誕生により、高級品としての携帯電話の姿は一変する。この料金体系では、ユーザーが端末を買い取って使用する。そのため、まずは高額なレンタル保証金が不要となった。さらに基本料金や通話料金も大幅に値下げ。誰もが携帯できるアイテムへの第一歩を踏み出したのである。これにより爆発的な普及を始めた携帯電話。同社の契約台数も約2年で一気に500万台を突破した。

 NTTドコモは、お買い上げ制導入の前に、日本中に次々と基地局を設置すると同時に、ユーザーが利用しやすい端末の開発を進めていた。地道に、そして着々と自社の携帯電話の存在価値を高めていっていた結果、「NTT」という冠のブランド力もさることながら、「最も繋がりやすいドコモ」の信頼感に、加入者が集中。携帯電話普及を促すと同時に、自分たちも圧倒的な契約数を確保し、企業の土台を完成させた。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
1997年には1000万台を突破するなど、順調に契約台数を伸ばしていったドコモは、1998年に東証一部上場を果たす。そしてその翌年、携帯電話、さらにはビジネスの在り方をも変えた、革新的なサービスを世に送り出した。ドコモの成長を語るに欠かせない「iモード」サービスの誕生だ。世界で初めてモバイルとインターネットを繋いだ「iモード」。このプロジェクトの開始は、実用から約2年前、1997年1月に遡る。

 当時同社の社長であった大星氏が「携帯電話機単体で気軽に利用できるモバイルマルチメディアサービスの実現」を提唱したことが始まりだ。モバイルマルチメディア。その潜在需要の大きさはわかっていても、世界中で過去にそれが実用された実績はない。社内公募や外部スカウト人事により結成されたプロジェクトチームは、手探りの状態で、前例のないサービスの開発に取り組んでいったのだ。

 ドコモをはじめ、あらゆる分野の最先端企業の技術と革新的なアイデアが組み合わさって実現した「iモード」。このサービスの開始により、携帯電話はインターネットを「いつでも、どこでも」利用できるようになった。そして、音楽のダウンロードやニュースの配信など、従来の携帯電話では考えられなかったサービスを受けることが可能になったのだ。

 「iモード」は、サービスを開始するや否や、瞬く間に普及していき、2000年には同社の契約台数は約3000万台に達する。さらに当時は、ITブーム真っ只中。モバイルインターネットを使った数多くの事業が生まれていった。また、「iモード」と提携してのサービスを望む企業も続出。ドコモが作り出した「iモード」の中で、一つのビジネス界が誕生したのだ。

 こうして「携帯電話」の枠を越え、日本経済の中心に飛び込んだNTTドコモは、「iモード」サービス開始から約1年で時価総額が日本一となったのである。独立からわずか7年、上場から1年半での偉業だった。

 ちなみに「携帯電話」が「ケータイ」と片仮名で表現されるようになったのも丁度この頃から。それは、これまで通話の機能しか持たなかった「携帯電話」から、多機能を備えたモバイル端末「ケータイ」へ。読み方は同じでも「違う物」という意味で使われるようになったのだ。
 
「★ALL IN★ 世界ケータイ」の名のもと、「3G+GSM」を標準搭載した905iシリーズ。日本人渡航先の99.8%をカバーし、iモードも117の国・地域で使用することが可能だ。今年の2月からは、海外iエリアサービスも開始。滞在国の地図や天気を日本語で提供してくれる。
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
「お買い上げ制」が生んだ通信インフラ。「iモード」が呼び込んだITインフラ。NTTドコモの急成長を促した、この2回のインフラだが、特筆すべきは、両者ともにドコモ自らが作り出しているということにある。冒頭で述べたことを覚えているであろうか。「携帯電話の普及も、ドコモの成長も、決して時代の流れなどという『偶然』の産物ではない」。偶然のはずがない。モバイル業界の時代の流れ、それを作ってきたのがNTTドコモ自身であったのだから。

 そして2004年、ドコモはまたもや新しいインフラを提供すべく、新しいサービスを開始した。クレジットカードやIDカードの役割を一手に担う「おサイフケータイ」サービスである。

 きっかけは2001年頃、JRからの依頼であった。ドコモ側にICカードをケータイに付けられないかという依頼があり、JR、ソニー、ドコモの共同検討の末、約3年の歳月をかけ実用化に至る。

 モバイル通信機器の枠を飛び越え、まったく新しい可能性を提示した「おサイフケータイ」サービスの開始により、生活インフラという新たな成長局面を迎えたドコモ。日本有数の企業に成長した今なお、新しいサービスを提供し続けられる理由はどこにあるのだろうか。2009年の同社の採用ホームページに、その答えがあった。

「ドコモは、設立から15年ほどしか歴史のない、いわばベンチャー企業です。確かに規模は大きいけれど、そのベンチャースピリットだけは、常に忘れてはならないと考えています。
 ドコモは、携帯電話の歴史を切り開いてきた、業界のリーディングカンパニーです。先進の技術を追求し、その技術をベースにした多彩なサービスを提供することは、私たちの使命、と言うよりも本能に近い行為です。
 ドコモだからできることが、あります。ドコモでなければできないことが、あります。常に一歩先へ。独創の領域へ。私達と一緒に世の中にインパクトを与える、新しい歴史を創りましょう」
(NTTドコモ採用ホームページより抜粋)

 企業の規模が大きくなっても、失われぬベンチャースピリット。そして、それを支える最先端技術。この両者がある限り、NTTドコモが歩みを止めることはない。