天野 雅晴
株式会社グローバルビジョンテクノロジー
会長



天野 雅晴
Masaharu Amano


1979渡米。修士号取得と米ハイテク企業勤務の後、90年にグローバルビジョンテクノロジーをシリコンバレーに設立。03年に同日本法人を東京に設立し、両者代表として今日に至る。 著書に「Califomia Winds」(成美堂)など。

第4回
「恥文化」と「罪文化」

良く言えば協調性が高い、悪く言えば流されやすい。日本人が何かを判断する際に強く影響を与える意識に、「恥」の意識がある。周りを気にせず、何事も自分自身で考えて判断するアメリカ人とは大きく異なるのだが、ある文化人類学者の言葉を借りると、これは「恥文化」と「罪文化」、両国の文化の違いから生まれた判断基準の違いなのである。
 

 
何かをやらなければ、あるいは、やるべきでないと日本人が思うとき、その判断の基準のひとつに「恥」の意識がある。

 他人に対して恥にならぬよう勉強し、努力する。人並みの生活ができなければ恥、隣人が持っている流行物を持っていないのも恥。ときには、まわりと違うことをするだけで、恥になることさえある。

 戦後間もない日本を研究し、日本人の考え方を考察したアメリカの文化人類学者、ルース・ベネディクトが、著書『菊と刀』の中でこの「恥文化」について述べている。

 一方、西洋諸国は、自分自身の倫理観に基づいて判断する「罪文化」であると彼女は言う。「恥文化」では、判断の拠り所は自分ではなく、まわりの人だというわけだ。

 どちらがいいとか悪いとかというのは一概に言えない。しかし、日米を往復していると、確かにそのような違いを感じる。

 アメリカはルーツの異なる人種の寄り集まりなので、隣人のまねなどしていたら切りがない。異なる考えや主義を持つ人々が共存する「多様化社会」だから、既成概念も少なく、何事も自分自身で考えて判断する「罪文化」が主流となるのだ。

 どちらの「文化」にもいい点と悪い点があるだろう。「罪文化」にはより主体性があると言えるが、他人を気にせずやりすぎるとまわりの迷惑になる。「恥文化」も流されすぎると無駄が発生したり、悪いことでも「みんながやっているから」という理由で肯定されてしまったりする。

 ビジネスシーンでも、日本企業の判断基準は「恥文化」の影響が少なくない。みんなが採用しているという理由が判断基準となり、本当に正しいものや必要なものを前例がないために受け入れない。ルール違反とわかっていても他社がやっていれば安心してやってしまう。

 社会の多様化は世界規模で進んでいる。日本もだいぶ多様化してきた。今後は日本でも、もっと「罪文化」の良い点を取り入れるべきではないだろうか?



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