天野 雅晴
株式会社グローバルビジョンテクノロジー
会長



天野 雅晴
Masaharu Amano


1979渡米。修士号取得と米ハイテク企業勤務の後、90年にグローバルビジョンテクノロジーをシリコンバレーに設立。03年に同日本法人を東京に設立し、両者代表として今日に至る。 著書に「Califomia Winds」(成美堂)など。

第6回
ここ数十年で日本は大きく変わった。
だからこそ、どんなパワーをどこで発揮していくべきなのだろう。
 

 
今回で最終回となる本コラムの締めくくりとして、在米三十年、仕事で日米間を頻繁に往復して来た立場から少しお話したい。

 この三十年、いろいろな意味で日本は大きく変わった。戦後の高度成長が止まり、モノがない時代からモノが溢れる時代になった。そしてパソコンや携帯の普及で、人と人の間のつきあい方もかなり変わった。

 国全体ではまだ世界有数の経済大国だか、「国民一人当たりのGDP」で見ると、世界第二位から二十位くらいに後退した。それでもしかし、日本人の「現場力」は、今でも世界トップレベルだろう。

 組織としての機能も含め、いろいろな現場に表れる様々な作業能力のことを私は「現場力」と呼んでいる。ちなみに、アメリカ人の「現場力」は一般に意外と低い。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を読めば、日本人が持つ高い「現場力」は、民族として長い間培われて来たものであることがよくわかる。決して偶然などではなかったのだ。

 一方、近年、日本の悪い面も目立つようになって来た。不登校やひきこもりの増加。いじめの問題。そして、無差別殺人や猟奇的と言わる異常な事件の増加。

 それでも日本は作業効率や組織力ということでは今でも本当にレベルが高い。そして、その結果、富は会社に蓄積される。しかし、個人への富の還元や「心の豊かさ」ということにおいてはどうなのだろう?私のまわりを見る限り、その点ではむしろアメリカの方が少し上のように思える。

 問題は、狭い日本に閉塞感が広がり、折角のパワーをうまく生かせない人が増えること。そして、それによって閉塞感がさらに悪化したり、いじめや異常な事件がさらに増えたりすることだ。

 では、日本人のパワーを「現場力」の低い海外で発揮させたらどうだろう。海外に渡った日本人が、個人としての富や「心の豊かさ」を取り戻せたらどうだろう。

 たとえ日本がその分「現場力」を失うことになっても、日本人のパワーを世界中で活かせることができるなら、閉塞感の中でおかしなことになるよりも、ずっとずっと意味のあることではないだろうか。



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